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熱燗と冷やの正しい意味は? 純米酒と吟醸酒の区別は? 日本酒のキホン

― 30代が知らないと恥ずかしい! 今さら聞けないお酒のキホン第31回 ―  最高のお酒でありながら、あり得ないほどの低価格で楽しめる日本酒。居酒屋で普通に出されるだけでなく、専門店も多く、グローバルでも「sake」で通じます。和食にバッチリ合い、特に鍋料理には欠かせません。料理に外さないお酒を楽しみたいなら、お店のスタッフにオススメを聞くとよいでしょう。

おひとつどーぞ

 とは言え、30代なら日本酒のキホンのキくらいは、身につけておきたいところ。スタッフに質問するにも最低限の常識が必要になります。

「熱燗」や「冷や」の正しい意味は?

 まずは、飲み方から。温めるのが「熱燗」、冷たいのが「冷や」というイメージを持っている人は多いのではないでしょうか。もちろん、そう伝えればお店の人は出してくれます。しかし、出てきたお酒が熱すぎたり、ぬるく感じたりする人もいます。これは、お店が適当にしたのではなく、そのように注文したためです。  日本酒を温めたものを燗酒と言いますが、熱燗はその中でも、50度くらいに温めたものを指しているのです。そこから5度ずつ下がっていくと、上燗、ぬる燗、人肌燗、日向燗と下がっていきます。もちろん好みで選べばいいのですが、いいお酒ならあまり温度を上げず、上燗やぬる燗で楽しむことをオススメします。  お酒好きのなかには、「上等の日本酒を燗するのは冒涜だ」と言う人もいいます。言いたいことはわかるのですが、人が美味しく飲んでいるときに突っ込みをいれるのは避けましょう。自由に楽しんでよいと思います。

日本酒はそのクオリティを考えると安く販売されており、コストパフォーマンスはダントツです

 とは言え、筆者も上等な日本酒を熱燗にするのはちょっともったいないなと感じます。まずはスタッフのオススメの温度で楽しんでみてはいかがでしょうか。ちなみに、55度くらいに温めたものは、とびきり燗と呼びます。ここまで温度が上がるとお酒の良さも飛んでしまうので、手頃な日本酒で体をがっつり温めたい時だけにしておいたほうがよいでしょう。  では、「冷や」とはなんでしょうか。これは常温のことを指します。燗酒の反対の意味で使われていましたが、もちろん昔は冷蔵庫などはありません。温度で言えば20度くらいです。では、冷蔵庫で冷やしたお酒が欲しいときはなんと言うでしょうか?   こちらが「冷酒」です。ちなみに、冷酒も温度により、呼び方が変わります。15度が涼冷え、10度が花冷え、5度が雪冷えと言います。さすがに、注文時に「花冷えで」というのは痛い感じになりかねないので避けた方がいいですが、日本の文化なので覚えておきましょう。

醸造アルコール入りのお酒=品質が悪いの間違い

 日本酒の種類も把握しておきたいところです。国税庁が公開している「酒のしおり」によると、吟醸酒、純米酒、本醸造酒などの特定名称8種類が規定されています。使用原料と精米歩合、こうじ米の使用割合に加え、香味の要件が指定されています。  純米酒と付くのは、米と米こうじだけを原料に使っており、吟醸酒と本醸造酒はそれに醸造アルコールを加えます。精米歩合が60%以下だと吟醸酒、50%以下だと大吟醸酒となります。  精米歩合とは、玄米に対する白米の重量を表します。精米歩合60%というのは、玄米の表面40%を削ったということです。食べるときには栄養分のある玄米の表面ですが、日本酒にする際は邪魔になってしまうのです。当然、歩合が低くなると、その分手間もコストも高くなるのでお酒の値段も上がります。

「酒のしおり」に記載されている特定名称の清酒の解説

 醸造アルコールという単語にアレルギー的な反応をする人もいますが、きちんとした知識を持っておきたいところです。醸造アルコールは、でんぷんなどを発酵させて蒸留したアルコールのことです。醸造アルコールをもろみに入れると、すっきりした味わいになります。また、劣化の原因になる乳酸菌の繁殖を抑えるといった効果もあります。化学的に作った薬品ではないので、安心してください。  醸造アルコールを入れたお酒は品質が悪い、という都市伝説のルーツは「三倍増醸清酒」にあります。戦争で米不足になった日本では、量を確保するために日本酒にその2倍の醸造アルコールを追加していました。もちろん、味が薄くなるので、甘みを追加したりしてどんどんまずいお酒になりました。ただし、2006年の酒税法改正で、この「三倍増醸清酒」は清酒カテゴリーから外されました。現在では、吟醸酒や本醸造酒に利用できる醸造アルコールは白米の重量の10%以下になっています。  ということで、普通の日本酒と比べると吟醸、大吟醸は上等なお酒となります。一般論では、精米歩合が低いほど、上等なお酒になります。そして、純米酒と吟醸酒では、純米酒の方が高価になる傾向がありますが、どちらが格上ということはありません。好みで選ぶとよいでしょう。
お酒を毎晩飲むため、20年前にIT・ビジネスライターとしてデビュー。酒好きが高じて、2011年に原価BARをオープン。2021年3月には、原価BAR三田本店をオープンした。新型コロナウイルス影響を補填すべく、原価BARオンライン「リカーライブラリー」をスタート。YouTubeチャンネルも開設し生き残りに挑んでいる
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