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男女逆転で見えてくる「女が年下男子を飼いたくなるとき」 ペヤンヌマキ×安藤玉恵

 15歳の美少女・ナオミの魔性の美しさに翻弄され、やがては身を滅ぼしていく男・河合譲治の姿を描いた、谷崎潤一郎の名作小説『痴人の愛』。この作品を現代に置き換え、男女逆転させて舞台化する試み『男女逆転版・痴人の愛』が、12月8日~19日、東京・こまばアゴラ劇場で上演される。  手がけるのは、演劇ユニット「ブス会*」で、これまで女性のリアルな心情や生態を描いてきたペヤンヌマキ(劇作家・演出家・AV監督)。学生時代から20年来の付き合いである女優・安藤玉恵を主演に迎え、美少年のナオミ(福本雄樹)に魅せられていく40歳の独身女性・洋子の視点から物語を描いていく。
ペヤンヌマキ&安藤玉恵

劇作家・演出家のペヤンヌマキ氏(左)と、女優の安藤玉恵氏。学生時代から20年来の盟友である2人が、生誕40周年記念と銘打って上演する公演が『痴人の愛』だ

 今年7月には、先行してリーディング(朗読)公演も行われて好評を博したこの作品。アラフォーになって“美少年を飼いたい”欲望が芽生えてきたペヤンヌ氏の心情と、谷崎の耽美的な文体が共鳴し合い、まったく新しい世界ができあがることになりそうだ。そこで、男女逆転させたことで見えてくる、“年下を育てたい”願望の性差について、2人に語ってもらった。

観賞物としての美しさを求めるのは男に絶望したから!?

――まずは、谷崎潤一郎の『痴人の愛』を、男女逆転させて上演しようと思った理由を教えてください。 ペヤンヌマキ(以下、ペヤンヌ):私、もともとは年上男性が好きだったのに、35歳を過ぎた辺りから、急に男子高校生が気になり出したり、フィギュアスケートの羽生結弦選手にハマったりするようになったんですね。そのうち、とうとう“美少年を飼いたい”みたいな気持ちが芽生えはじめて(笑)。40歳を迎えて、ふと『痴人の愛』を読み返してみたら、譲治に感情移入している自分に気付いたんです。そこで、譲治とナオミの関係を男女入れ替えて演じたら面白いのではないかと。 安藤玉恵(以下、安藤):そのお話を聞いて、私にはまったく理解できない感情だったので、最初は正直びっくりしました。もちろん私も、高校球児の涙にグッときたりはするけど、浅田真央ちゃんがオリンピックで転んじゃったときも一緒に泣いてたクチだから、“少年”にだけ特別に萌えるわけじゃないんですよね。 ――ペヤンヌさんは、ご自分でなぜ“美少年”に目覚めたんだと思いますか? ペヤンヌ:年を取るにしたがって、同世代の男性のゲスな部分が見えてきたりして、断絶や絶望を感じることが多くなってきたんですよ。すると、かえって男性のきれいな部分しか見たくないというか、完全に“男”になりきってしまう前の、17歳くらいの子がかわいいな……とか思うようになって。男性にひたすら観賞物としての美しさや、癒しのかわいさだけを求めるようになったんです。 ――現実の男性に幻滅して、まだ汚れてない少年がいいということですか? オタクが10代のアイドルに入れ込む気持ちと似ているかもしれませんね。 ペヤンヌ:そうそう、夢を見ちゃうんだと思います。確かに、もともと一度ハマるととことんのめり込む、オタク的な素養があるのかもしれません。
安藤玉恵氏

映画『夢売るふたり』(西川美和監督)をはじめ、数多くの映画・ドラマなどで印象に残る演技を見せる女優・安藤玉恵氏

安藤:ペヤンヌさん、フィギュアスケートが好きすぎて自分で習い始めたくらいだから(笑)。でも私、そもそも男性に対して“かわいい”“美しい”と思ったことがないから、ペヤンヌさんの気持ちが全然わからないんですよね。 ペヤンヌ:作り手は、自分がプロデューサーになって輝く才能を育てたいって気持ちが強い人が多いんじゃないかな。演出家なんて、いいなと思った俳優さんを自分が育てて、舞台で輝いてる姿を見て満足する……みたいな職業だから。 安藤:そうなの?(笑) でもペヤンヌさん、10年後とかに、自分の好きな男の子ばっかり出すハーレム演劇とか作ってそう。 ペヤンヌ:今回の『痴人の愛』の世界が行き着く先はそこですよね。羞恥心がゼロになったら、やってるかもしれないです(笑)。 安藤:今回も、ペヤンヌさんの個人的なフェチズムが炸裂してますよ。リーディング公演のときから、男性の背中を見せることにすごくこだわってたもんね。リーディングなのに、「背中はマストだ」って(笑)。舞台版でも、背中をより美しく見せるために美術や照明も変えますから。
ペヤンヌマキ&安藤玉恵

美少年への愛を熱弁するペヤンヌ氏(左)と、「その気持ちが全然理解できない」と頭を抱える安藤氏

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年下にのめり込む滑稽さに気付かない男性、自虐する女性
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ペヤンヌマキ×安藤玉恵生誕40周年記念ブス会*
『男女逆転版・痴人の愛』は、2017年12月8日(金)~19日(火)、こまばアゴラ劇場にて上演
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