更新日:2019年04月03日 00:42
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ゾンビに間違えられる経験は、平成でもう終わりにしたい――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第37話>

ギャルが悲鳴を上げるので、僕はしぶしぶゾンビの振りをした

 これはもう大パニック、「アニキが! アニキが!」とか参加者全員が大騒ぎ。かと思ったら同時多発的に参加者のふりしたサクラが発症してですね、騒然としてくるわけですよ。女の子なんてあまりの恐怖に泣いてましたからね。  そのかつては仲間だったゾンビを銃(モデルガン)で撃って撃退しないといけないわけですが、戦う人、逃げ惑う人、踊りだす人、と訳の分からない状態になっているなかで、僕は足を痛めているので、戦うのも逃げるのも大変だ、と少し離れた場所でその様子を見守っていたのです。  ゾンビを撃退し、キャンプ場に束の間の平和が戻ってきたのを確認し、自分のテントに戻ろうと移動します。こんな楽しいイベントなのに足を痛めるなんて、と足を引きずって歩いていると、あまりの恐怖に泣いていた女の子と視線が合いました。  「いやああああああああああ、またゾンビ!」  足を引きずってる僕の姿を見てゾンビだと思ったんでしょうね。まだサクラが紛れ込んでやがった、もういい加減にして、という悲鳴でした。  「いや、ちがう、そうじゃないから」  ゾンビ映画やゲームの発展により様々なゾンビが発明されました。ヴーヴー唸ってズリズリと動くステレオタイプなゾンビだけでなく、異常な速さでダッシュしてくるゾンビや、機関銃を装備したゾンビ、スナイパーゾンビなんかもいます。様々なゾンビがいますけど、言い訳するゾンビってなかなかいないんじゃないでしょうか。  「絶対にそう! 絶対にゾンビ! いやああああああああああああああああああ!」  「ゾンビじゃないですから!」  僕もまあ、けっこう長いこと人生ってやつをやってますけど、まさか本気で「ゾンビじゃない」って弁明する日がくるとは思いませんでしたよ。  「絶対にゾンビ! そんな顔してる!」  もともとこういう顔だわ。失礼な女だな。  まあ、この女の子の誤解だけならまだいいんですけど、女の子の悲鳴大きいですから、血気盛んな若者どもが「どれどれまたゾンビが出たって? さっきは暴れ足りなかったんだよ。対峙してやるぜ」みたいな顔して集まってくるのです。  そういった好戦的な若者が人垣となっておっさんを取り囲んでですね、またイベントが始まったぞ、とワクワクしてるんですよ。もはや勘違いであると言えない状況じゃないですか。  結果、僕も「ヴーヴー」とかいって迫真のゾンビ演技をするしかなく、ガチでゾンビだと勘違いされ、それに合わせてゾンビのふりをする、というちょっと奇妙な体験をしたのでした。普通に血気盛んな若者に退治された。一般参加者なのにゾンビとして退治された。  ほら、本気でゾンビに間違われているでしょ。  このように、まさかありえないだろう、という事象でも、そのシチュエーションによってはありえるのです。そう、この世にはまさかがありえるのです。  ちなみに、完全に別件ですが、山の中でキノコを探しているときにどうしても我慢できず、ノグソしていたら若い娘に発見され、本気でイエティに間違われたこともあります。そう、まさかはあるのです。 【pato】 テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。ブログ「多目的トイレ」 twitter(@pato_numeri) ロゴ・イラスト/マミヤ狂四郎(@mamiyak46
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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