40代になれば、生活に余裕が生まれる……そう夢を描いていたが、人々の手取り年収は下がり続けている。年収400万円未満の“低所得おじさん”は増加の一途を辿るばかりだ。70歳まで働く時代に日本社会が抱える課題と当事者の生活に迫る。

羽村英明さん(仮名)
家賃3万円の事故物件に。家族4人で貯蓄ゼロ暮らし
…羽村英明さん(仮名・43歳・既婚)/アルバイト/年収360万円
貯蓄や小遣いがゼロでありながら、自らの生活を「幸せです」と語るのは、バイク便勤務9年目で2児の父の羽村英明さん(仮名)だ。
「高校卒業後に古着屋で13年間勤務しましたが、会社が倒産して無職に。同時期に副業でやっていた転売も失敗して40万円の借金を抱え、さらに当時同棲していた彼女が家賃4か月未払いのまま失踪と散々な時期でした。父親との確執で実家にも戻れず、ライフラインを失いホームレスになったんです。その後は値札シール貼りや工事現場、ゲーム動作チェックなどの日雇いを転々としてきましたが、今は先輩に紹介してもらったバイク便に落ち着いています」
月収は30万円となかなか高給だが、70歳まで続けられる業務内容ではなさそう。
「毎日250~300km走行し、帰社後にバイトのシフト管理もしているので大変ですね。月収もいいように思えますが、ガソリン代やメンテナンス費は自腹なので手取りは23万円程度。養育費、生活費、借金返済で手元に残るお金はゼロで貯金もありません」

夕食の定番は厚揚げのニンニク醬油炒め。
現在は、ホームレス期に辿り着いた都内の家賃3万円の事故物件に家族4人で住んでいる。苦労続きの人生だが、彼に悲壮感はない。
「5歳の娘と1歳の息子がいますが、今でも妻と関係は超良好。こんな生活でも一切不満を漏らさない妻には感謝しかないですね。将来は夫婦でコンビニのオーナーになって、田舎暮らしを楽しみたいです」
貯金ゼロでコンビニオーナーになれるのか!?

コンロを持参し埼玉県巾着田でキャンプ。食材はコンビニで購入したソーセージのみだが子供も満足
<取材・文/週刊SPA!編集部>
― [低所得おじさん]の絶望 ―