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早稲田卒・40代で年収120万。転職10回で見た現実

 40代になれば、生活に余裕が生まれる……そう夢を描いていたが、人々の手取り年収は下がり続けている。年収400万円未満の“低所得おじさん”は増加の一途を辿るばかりだ。70歳まで働く時代に日本社会が抱える課題と当事者の生活に迫る。

親の介護とバイトの日々。同窓会にも出たくない…

…青木俊行さん(仮名・44歳・独身)/アルバイト/年収120万円  高学歴でも低所得に陥ってしまう人はいる。早稲田大学卒の青木俊行さん(仮名)は、昨年の年収がなんと120万円だった。 「本当は都内で働きたいのですが、父の介護があるので実家の名古屋を出るのが難しい。それに引っ越し資金すら貯められない状況です」
実家暮らし

昨年から実家暮らし。自身の貯蓄はゼロどころか両親への借金でマイナスだが、毎月2万円くらいは自由に使ってしまうとのこと

 父親の厳しい教育が嫌で上京した青木さん。大学卒業後は、着エロDVDの制作会社に就職した。 「最初は正社員になったものの、休日出勤は当たり前。ショップへの買い切り要求や児童ポルノギリギリの仕事に疲弊して退職しました。その後に勤めたツーショットダイヤル会社や賃貸保証会社も、倒産や勤めていた部署が閉鎖するなど、不運の連続でした」  一昨年は職業訓練で得た介護の資格を生かして施設で働くも、3か月で退職することとなる。 「父親が認知症になり、介護離職して帰省することにしたんです。今の仕事は運送会社の夜間仕分けバイト。実はこれで10回目の転職なのですが、どんどん給料は下がっています。今は母親に借金して生活しているので、母が亡くなってしまわないかが一番の不安です」  最近はめっきり出歩くことも少なくなってしまったという。 「25年ぶりに中学校の同窓会に顔を出したら『何で有名大学を出たのにバイトなの?』と同級生から白い目で見られて……。それで知り合いに会うのが嫌になってしまい、引きこもりがちな日々です」  会社都合退職や親の介護など、人ごとだと思うことなかれ。  特に介護離職は年々増えて、社会問題化している。個人の力で解決できないことも多いが、せめて引きこもって孤立することだけは避けてほしいーー。
愛猫

父親の認知症治療の一環で、アニマルセラピーを行うため飼い始めた愛猫。今の青木さんにとっても唯一の心の癒やしだ

<取材・文/週刊SPA!編集部> ― [低所得おじさん]の絶望 ―
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