更新日:2023年03月21日 16:04
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“高校生らしくない”からツーブロック禁止。理不尽な校則に怒り/鴻上尚史

「無意味な校則」への擁護論に反論

 そして、「無意味な校則」を擁護する理論にひとつずつ反論しました。 学生 まず、「社会は不合理なんだから、不合理な校則で予行練習する」と言うのなら、ブラックバイトのオーナーが「バイトで不合理を学べ。正月も働け。授業も出るな」と言ったら感謝するのか? 教育とは何故不合理が生まれるかを追求し解明する事で耐える事ではない、というようなことを書き、続けて、「高校は義務教育でないから校則が嫌なら行かなければいい」という反論に対しては、確かに日本の高校が全て私立で税金が1円も投入されてないなら(じつは私学助成で税金が使われているのですが)この論理は成立する。が、大多数の高校は税金によって運営されている公立高校です。納税者にとって納得できる場所にする社会的責任があるだろうと書き、さらに、 「偏差値の高い高校はいいけど、他は校則を厳しくしないと荒れる」という、ちょっと具体的な反論には、成人式の例を出しました。  毎年、成人式で暴れる若者は偏差値戦争からの敗者が主流です。彼らは公式な場所で騒ぐ事で教室で無視され続けてきた復讐と自己主張をしていると、僕は思います。そのためには大人が仕切るオフィシャルな場所で抗議する必要があるのです。  荒れる教室もまた、大人が「服装の乱れは心の乱れ」という根拠のない命題を押し付けてくるからこそ、髪を染め制服を着崩すことが復讐と自己主張の手段になると考えます。  陰湿なイジメをしている奴らがみんな服装が乱れていたら、なんと分かりやすい世界だと思いますが、残念ながら心の乱れが服装に現れてないことの方が多いです。  こう書くと、「荒れている底辺高校を知らないのか?」と言われますが、そこで必要なのはアメリカの多くの公立高校の校則「ナイフや銃を学校に持ち込まない」等の「人間として守らなければいけない事」であって髪の長さや色を決めることではないでしょう。決めれば反抗する目標と理由を与えるだけです。  何よりも、極端に荒れてない多くの高校では、無意味な校則によって生徒たちが学校と教師に対して不信感を持ち、諦め、思考停止になります。極端な事態を想定するあまり多くを失うことをマネジメントの失敗と言います。……というようなことを書きました。  ふう。校則問題は、教育の根幹だと思うので、本当に熱くなってしまうのよね。失礼しました。
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