羽田や成田、関空など空港に乗り入れている鉄道駅は多いが、いずれも毎日多くの客が利用している。だが、なかには空港最寄り駅なのに利用する者がほとんどいない駅があるという。それが北海道は道東、女満別空港の最寄り駅『西女満別駅』だ。
女満別空港
先日、別件の取材で北海道を訪れた際、最後の滞在先が網走だったため、その隣町にある
女満別空港から東京へ戻ることに。地図アプリで確認すると、空港から西女満別駅まで直線距離にして500mほど。最寄り駅と呼ぶにはちょっと微妙かしれないが、大きな空港ではターミナル内でそのくらい平気で歩かされるし、特に問題はない。
1日の平均利用者数4.8人の「西女満別駅」
ところが、泊まっていた網走のホテルの従業員に尋ねると、「西女満別駅ですか? 森の中にある無人駅で『本当に近くに空港があるの?』って思うかもしれませんが、歩いて10分ほどで空港に行けます」とのこと。
森の中の無人駅……それってまるで秘境駅じゃないか。空港最寄り駅の要素がまったくなさそうな気がするが、逆に気になってしまう。従業員からはフライトに合わせて網走市内から出ている路線バスを利用したほうがいいと言われたが、こんな面白そうな話を聞かされて西女満別駅に行かないわけにはいかない。
後でわかったがJR北海道の統計を確認すると、西女満別駅の1日の平均乗降客数はたったの4.8人(2013~2017年の調査日の平均)。女満別空港の1日の平均利用客数が2308人(『北海道オホーツク振興局』平成30年統計)だから利用率は約0.2%ということになる。もはや空港アクセスの交通手段としては完全に機能していない。
実際、網走駅から西女満別駅方面に向かう列車はローカル線の雰囲気を醸し出す、ちょっと古めのディーゼルカー。回送車両1両を含む全3両という変則的な編成で、4人掛けのボックス席が並ぶ車内はガラガラだ。
確かに、空港最寄り駅には見えない
どこからどう見ても秘境駅だ
列車は自然に囲まれたのどかな風景の場所を走りながら25分ほどで西女満別駅に到着。ホームは列車3両がギリギリ停車できる長さしかなく、しかも降りたのは案の定自分1人だけ。列車が出発した後、改めて周囲を見渡してみたが深い木々に覆われており、夜は絶対下車したくない。ヒグマが出没してもおかしくないような場所だ(※地元自治体の熊出没情報のサイトを確認したら、西女満別駅から10㎞ほど離れたエリアで複数の目撃情報が紹介されていた)。
駅舎はなく、待合室用の小屋があるだけ
定期的に掃除しているのか、意外とキレイだった
待合室にあった客が自由に書き込める思い出ノート
駅舎と呼べるような建物はなく、トイレも見当たらない。ホームの端にある機械室のような建物以外には、小さな小屋が1つあるだけだ。中に入ると待合室で、訪れた鉄道ファン向けの思い出ノートが用意されていた。鉄道好きの間では有名な駅なのかもしれない。
発着本数は少ない
時刻表を確認すると、西女満別駅には上下線合わせて1日18本の列車が停車するが、普通列車ばかりで特急はすべて通過。路線バスのように飛行機の発着時間にリンクしているわけでもないようだ。
駅前の道はまさかの未舗装!
駅前から未舗装の道を100メートルほど進み森を抜けると、ようやく舗装された道に合流。すると、空港までの行き方が描かれた看板があった。
女満別空港への道順案内板
でも、直線距離なら短いのに駅から真っすぐ空港に向かう道がないらしく、案内されているのはものすごく遠回りした道順だ。スマホのナビアプリを起動させてみると、看板のルートだと空港までは約1.4㎞。どう考えても歩いて10分では着かない距離だ。
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。
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