仕事

バブル組・大企業社員51歳の辛い日々。地方たらいまわしの社内漂流10年

 ますます広がる日本社会の格差。今回は年齢とともに過酷さが増す中高年に注目。社内孤立、転職失敗など、中高年たちは働いていても居場所がなくさまようケースが増えている。仕事に真摯に取り組む彼らが、なぜ漂流したのか実態を探る。
年収100万円の絶望

某大手食品会社社員の太田徹さん(仮名・51歳)

約2年ごとに地方の営業所を転々。いまだ終着地が見えない社内漂流

 会社という大きなコミュニティの中で、中高年が漂流するケースもある。某大手食品会社社員の太田徹さん(仮名・51歳)は、“社内漂流”する一人だ。 「40歳で課長に昇進し、会社の未来を思い行っていた日々の提案が、“経営陣への批判”と捉えられてしまった。管理不足という適当な理由をつけられ、四国の営業所に左遷。でも、これは私の左遷人生の序章にすぎませんでした……」

転籍先でも邪魔者扱い。3年たっても孤立のまま

 香川県高松市で2年働き、慣れてきたら次は能登半島、熊本の阿蘇、まさに狙ったかのように飛ばされる。そして、48歳のときには北海道の子会社への出向を命じられてしまう。 「同期は2~3年で本社に戻り、順調に重役クラスの役職についていた。私もいつか本社に戻れることを励みに頑張っていましたが……。家族を養うために辞めるわけにはいかず、辞令を受け入れるしかなかったんです」  しかも、赴任先は札幌などの都市部ではなく、ドラマ『北の国から』の舞台顔負けの過疎の農村地帯の小さな工場。副工場長の肩書がついているとはいえ、仕事の内容は工場作業員のパートの主婦たちとほとんど変わらない。 「マニュアル化された単純作業なのですが、年のせいなのか覚えるのが大変。今までこういった現場作業の経験はまったくなかったし、なぜ私がこんなことをしなきゃいけないのかとの思いも正直ある。  パートの女性たちから『私たちでやりますから!』と邪魔者扱い。デスクワークは工場長や別の従業員が担当して、自分がやるべき仕事って実はほとんど与えられていない。おかげで毎日時間が過ぎるのがゆっくりすぎて、それが逆に辛い……」  ちなみに工場長以下、従業員はほぼ地元の人間。無視されたりいじめに遭っていたりするわけではないが、見えない溝があるのか同僚主催のジンギスカンパーティにも呼ばれず、赴任から3年たっても社内で孤立したままとか。 「ただ、このまま悩んでいたらうつになりそうですし、趣味で禅を学んだり、写経をしたりして心を落ち着かせるようにしています」 年収100万円の絶望
年収100万円の絶望

太田さんの写経グッズに愛読する禅の本。社内漂流を人生の修行と捉えれば、別のモノが見えてくるのかもしれないが……

 だが、来春には宮崎の子会社に出向ではなく転籍の話も出ている。太田さんの漂流はまだ続く。 <太田徹さんの漂流年表> 23歳 バブルの余韻が残る中で就職 42歳 高松の営業所に赴任 44歳 能登半島の営業所に赴任 46歳 熊本・阿蘇の営業所に赴任 48歳 北海道の子会社に出向 52歳 宮崎の子会社に転籍予定? <取材・文/週刊SPA!編集部>
年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声-

この問題を「自己責任論」で片づけてもいいのか――!?
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