更新日:2019年09月26日 12:46
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自衛隊がホルムズ海峡への派遣に耐えられない理由

派遣が決まったら拠点はどうなる?

――今回のサウジへの攻撃では、ドローンや巡航ミサイルが使用されたとの疑いが出ている。このような攻撃も想定されるのではないか。 小笠原:ドローンの技術は米国がリードしていたが、今やイランや中国は同等のレベルと見ていい。そして、こうした攻撃が想定される海域は、戦場と何ら変わらないのです。にもかかわらず、現状、自衛隊は相手から攻撃され、かつ身を守るためでなければ反撃できないので、損害が甚大になる危険を大いに孕んでいる。 また、自衛隊が戦えないわけですから、日本船舶の被害も増えるでしょう。自衛隊を派遣するなら、戦闘に巻き込まれることも想定した現実に即した態勢で派遣すべきですが、「戦闘地帯」という前提で議論になれば「戦場に派遣していいのか!」という批判が噴出する……。リアリティを伴った議論にはならないでしょうね。 ――仮に、ホルムズ海峡への派遣が決まったら、どこに拠点を構えることになるのか。 小笠原:海上自衛隊は海賊対処の派遣のために、ジブチに航空機運用の基地を持っているが、ジブチからホルムズ海峡は遠く有志連合の対応には使えない。民間船舶の警護をするために有志連合に艦艇を参加させるにしても、海賊程度の武装集団への対処しか経験がありませんし、そもそも恒常的に人員不足の艦艇乗組員を確保できるのかも不安です。 ただ、海賊対処法下では、海自の自衛官が多国籍軍を指揮したこともあるので、米軍などと話し合えば「有志連合」のなかで活躍する場もつくれるかもしれません。 一方、海外派遣では兵站を担う拠点を整備することも忘れてはいけません。ジブチの基地には売店がなく周りは砂漠なので、ちょっとした日用品の買い出しにも離れた町まで行かなければなりませんでした。軍隊に限らず、組織が動くには、人員が生きていくための食料や日用品、医薬品や燃料、移動手段などを含めた兵站が必要ですが、予算がないなかで、現場の隊員が不便を強いられているのが実情なのです。 ――「予算が足りない」というが、防衛省が出した令和2年度の概算要求は「過去最高」となっており、ここ数年の防衛費の伸びを懸念する声もある。 小笠原:毎年のように「過去最大」とか「焼け太り」などと報じられているが、中国が毎年7%超のペースで国防費を積み上げているのに対し、今年度の防衛予算は5兆2986億円と、前年度の5兆2574億円から、わずか412億円しか増えていません。“世界の警察”の看板を下ろし、軍事費を削減している米国も、トランプ大統領が「軍事費がGDP比2%に満たない国は2%に上げろ!」と、同盟国に対して“自国で守れるものは守れ”と主張するようになっています。 しかも、「微増」で得たわずかな予算は、宇宙やサイバー空間など新領域の防衛にかかる費用や、護衛艦いずもの「空母化」、F-35Bの購入などに割り当てられる予定で、自衛官の待遇改善にはほとんど回りません。私が問題提起したことで国会でも取り上げられましたが、ごく最近まで、自衛隊員は基地のトイレを使うときもトイレットペーパーを「自腹」で購入しなければならないほど困窮を極めていました。 こうしたバランスの悪さが生じるのは、予算の内訳を考えず、防衛費の総額にGDPの1%というシーリングを課しているからです。上限が決まっているから、装備を調達する際、高価でも入手したい兵器をまず要求し、兵站や自衛官の日用品などは後回しになる……。 幸か不幸か、自衛官の大多数は真面目で過酷な環境でも耐え忍ぶことができるから、陸自車輛部では、オイル代や高速代、タイヤ交換の費用などを自発的にカンパで集めるなど、隊員が「自腹」で補填しているのが実情なのです。
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「ブラック企業」のような労働環境
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自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……


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