更新日:2019年09月26日 12:46
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自衛隊がホルムズ海峡への派遣に耐えられない理由

経費の「自腹」が常態化した職場

――自衛隊員が「ブラック企業」のような労働環境に置かれているということか。 小笠原:厚生労働省の平成29年統計によると平均初任給が17万9000円のところ、自衛官の初任給は16万9900円と平均より低く、残業手当や休日手当もない。そのうえ、経費の「自腹」が常態化した職場にいたら、疲弊して辞めていく自衛官が後を絶たないのも頷けます……。 ただ、何年間もかけて厳しい訓練を受け、ようやく一人前になりかけた優秀な自衛官が次々と辞めてしまっては、費用対効果の面でも見合いません。防衛出動に際しても、自衛官に支給される「危険手当」の額は決まっておらず、負傷したり殉職したとき常に「賞恤金(しょうじゅつきん)」が支給されるわけではありません。 死亡の場合は適用されるが、負傷のみだと支払われることはほとんどなく、手足を失うなど、重い障害を負っても支給されないことのほうが多いのです。ホルムズ海峡に自衛隊を派遣すべきと思いますが、こうした現状を考えると、隊員を「戦闘地帯」には行かせたくはないですよね。 昨年1月に内閣府が行った調査では、自衛隊に対していい印象を抱いている人の数は実に89.7%に上るというアンケート結果もある。今回の千葉の台風被害もしかりだが、大規模災害が起きるたびに駆り出され、被災者の傷付いた心に寄り添いながら人名救助や復旧作業に汗を流す彼らに、十分な補償も与えないまま危険な任務に当たらせるのはあまりにも理不尽と言えよう。 10月から始まる臨時国会ではどんな議論が繰り広げられるのか? しかと見届けたい。 取材・文/山崎 元(本誌) 写真/ロイター/アフロ ※週刊SPA!9月24日発売号「今週の顔」より
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自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……


週刊SPA!10/1号(9/24発売)

表紙の人/浅川梨奈

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