中山向きのヴェロックスに注目
TARO:前残り狙いですね。僕は3歳馬のヴェロックスに注目しています。中山のコーナー向きだし、しぶとく折り合って差す根性もあるので、この馬こそ有馬記念の舞台が似合います。まだ重賞勝ちはないですが、東スポ杯の4着を除けばすべて3着以内。コース不問で器用に立ち回れる馬なんですよ。
TARO氏
早見:確かに、ヴェロックスはワイドの軸には最適。ジャスタウェイ産駒の初年度3歳馬という点も注目ですね。あれは忘れもしない’14年の有馬記念。ジャスタウェイを軸で買いましたが仕掛けが遅く、最後方から鬼脚を繰り出すも届かず4着。あれで大負けしたので、親父の仇を息子のヴェロックスで取ってもらいたいなぁ(笑)。
TARO:今回の有馬記念はまるで馬たちの紅白歌合戦かと思わせるほど、素晴らしいメンバーです。
早見:こんなに楽しい有馬記念って、久しぶりな感じがしますね。でもこれだけ混戦模様となると、あまりオッズがつかなそうですよね。「12番人気が3着なのに、配当はこれだけ?」みたいな。
TARO:消せる馬がいないけど、アーモンドアイが飛ばない限り大波乱はないかもしれません。とはいえ、有馬記念では直近の東京競馬場で好走した馬が人気になるんですけど、東京で走るのと中山で走るのとでは勝手が違いますから、人気薄の馬が3着に絡んでくる可能性も十分にあります。混戦模様なので、馬券は軸を決めて手広く流すのもオススメですね。早見さんが大好きなワイド馬券の出番かも。
早見和真氏
早見:ワイド馬券のよさは、応援している馬を集中して追えるところ。僕は、どの馬を見てたらいいかわからない競馬が好きじゃないんです。’99年にワイドが発売された当時は「ワイドなんて買うなら競馬やめちまえ!」と思ってましたけど、’00年の有馬で初めてワイドを買ったんです。テイエムオペラオー(1番人気)とダイワテキサス(13番人気)のワイド3万円一点勝負で50万円くらい勝って、それで翌年の学費を払えたんです(笑)。それ以来のワイド信者です。
TARO:ダイワテキサスを買えたのはすごい!(笑)。今回の有馬記念は、競馬をやってきた人なら、どこかのレースでお世話になった馬が1頭はいるんじゃないでしょうか。有力馬オールスターだから、思い入れも大事にしたいです。
早見:僕も有馬記念だけは「物語」で馬券を買いたいと思っていて、「この馬が走ったら面白い」っていう馬に賭けたいんです。それに、馬券を買う側としては、すごく考えがいがあるレースですよね。人によって、血統だったり、前走だったり、調教だったり、何かしら自分が持っている予想手段によって、結論を導きやすいと思う。「混戦でわからないから買わない」じゃもったいない。それぞれの物語に合致する馬が必ずいるはず。それが有馬記念の面白さですよ。
令和初の有馬はどの馬に……
TARO:有馬はちょっとのことで運命が入れ替わってしまう、幾多の名馬が負けてきた舞台です。あのディープインパクトが初めて負けたのだって、有馬記念ですからね。『ザ・ロイヤルファミリー』のように物語が詰まっている。
早見:サラブレッドは「血の継承」とよく言われますけれど、それ以上に、人間の思いが継承されてきたものの集大成だと僕は思っていて、それを『ザ・ロイヤルファミリー』にも込めました。もし僕の本がきっかけで有馬記念に興味を持った人がいたら、ものは試しに予想してみてほしいですね。それぐらい今年の有馬は面白い。
TARO:読者の方に、ビギナーズラックがあるといいですね。
早見:でも、こうして予想を披露するのってプレッシャーですよね。去年もスポーツ報知で有馬の予想を絡めたエッセイを書いたんですけど、それがなんと本番当日の裏一面を飾ってしまって。中山競馬場で知らないお兄ちゃんから「僕もパフォーマープロミスからいこうと思います」って言われたのが忘れられません……。
TARO:パフォーマープロミス、14着でしたよね。
早見:だからあの日のお兄ちゃんに捧げます! 一緒にアーモンドアイ切りましょう。僕は今からアーモンドアイが外枠に入ってくれることを祈っています(笑)。
【TARO氏】
ブログ「
TAROの競馬」で人気の競馬予想家。著書に『
回収率が飛躍的に上がる3つの馬券メソッド』などがある
【早見和真氏】
作家。’77年、神奈川県横浜市出身。競走馬と馬主を取り巻く“継承”の物語を描いた新刊『
ザ・ロイヤルファミリー』(新潮社刊)が話題
<取材・文/松嶋千春・野中ツトム(清談社) 撮影/赤松洋太>
※週刊SPA!12月17日発売号よりSPA!が運営する日刊SPA!内のギャンブル情報サイト「
勝SPA!(かちすぱ)」の取材班。Twitter(
@kspa_official)