更新日:2023年05月23日 17:16
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老後2000万円不足問題は本当?リアルに必要な老後資金を算出

―[明るい老後]―
 もはやキャリアもマネーもノープランで逃げられる時代は終わった。ただひたすら不安を唱えても、待っているのは破滅のみなのだ。そんな新しい時代を生き抜くための「知識」と「戦略」を身につけて、「明るい老後」を手に入れるべし! 明るい老後

老後2000万円不足問題の真実

 昨年、世間の関心を集めた「老後2000万円不足問題」。そもそも2000万円という金額の妥当性に疑問を投げかける識者もいる。『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』の著者でファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は、その理由を説明する。 「2000万円というのは、金融庁が総務省の『家計調査年報2017年』というデータをもとに、高齢夫婦無職世帯の月々の支出が実収入より約5.5万円多い赤字家計である数字を使用して、これが今後30年続く場合の不足金額を切り上げ算出したものです。調査のために偶然選ばれた世帯の平均値なので、年によって不足額はかなり上下します」  不足額は、抽出されるサンプルによって毎年異なっている。’15年には約2200万円、’18年には約1500万円となっており、振れ幅も大きいという。
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出典:総務省「家計調査報告(家計収支編)」

 さらに、支出の内訳へ目を向けると、そこにもツッコミどころが多いと言う。 「2人暮らしで食費6万4444円はずいぶん高い印象です。調査対象に外食が多い家庭が含まれて平均額が上がった可能性があります。  一方で住居費の1万3656円はかなり少ない。回答者の持ち家比率が高かったためと推測しますが、当然賃貸住まいだとこの額ではやりくりできません。  この手の試算は、単身か夫婦か、持ち家か賃貸かなど複数のパターンで行うべきもの。それを1パターンだけで『老後は2000万円不足します』と結論づけるのは政府の報告書としてはお粗末。各世帯に自助努力を促すために恣意的に金融庁が仕掛けた、いわゆる『炎上商法』を疑われてもやむを得ないような内容です」 「平均」を求めると一部の高所得(高支出)世帯に引っ張られる形で高めの数字が出ることが多い。 「本来は中央値も出したほうがより実態に即した数字が出ると思います。日本人は平均が大好きですが、こういったデータに惑わされないリテラシーが必要ですね」

金融庁の報告は穴だらけ!? 老後のリアルな不足額を算出!

明るい老後 それでは実際の不足額はどれほどのものなのだろうか。 「実は同じ年報に、高齢になるほど支出は減る傾向にあるとして、世帯主の年代別支出額も載せているんです。これによれば世帯主が75歳以上の家庭は、行動範囲が狭まり、食欲も減るためか、65~69歳の家庭と比べて5万円以上支出が低い。これらを合わせて計算すると、不足額は約1650万円と350万円も減ります。こちらの数字のほうが現実的と言ってよいでしょう」  とはいえ、1650万円は大金だ。退職金が期待できないこれからの時代、すべての人が用意できるとは限らない。深野氏は「あくまでケース・バイ・ケースですが」と前置きしたうえで語る。 「生活のダウンサイジングを試みればここからさらに必要額を減らすことも可能です。時間に空きができる老後は自炊も増え、食欲も減るので食費は3万円台まで減らせます。お酒も外より家飲みにしましょう。光熱費は新規参入の電力会社への切り替えや省エネ家電を利用すれば冬でも1万円程度になります。通信費は固定電話をやめて格安スマホにすれば1人5000円以下になります」
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