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コロナで街が死滅するも「違法カジノ」は盛況、“三密”具合は最悪

裏カジノ コロナ旋風が多くの業種に大打撃を与えているが、それは“裏社会”で生きる人々にとっても、決して無縁ではない。違法なドラッグやギャンブル、特殊詐欺(オレオレ詐欺、振り込め詐欺など)に関わっている彼らの現状はどうなっているのか。『半グレ』(彩図社)著者で裏社会に詳しい作家の草下シンヤ氏に話を聞いた。 ・・・・・・

合法の娯楽が減り、裏ギャンブルは活況

 東京・歌舞伎町や大阪・ミナミといった繁華街の雑居ビルやマンションの一室に入っていることが多い違法カジノ。ハイリスク・ハイリターンで射幸性の高い「パチスロ4号機(法改正により2007年9月に一般のパチンコ店からは撤去された)」を並べた「闇スロ」、ネット上でポーカーやブラックジャックなどカードゲームを通じてギャンブルを行う「インターネットカジノ(通称、インカジ)」では、外出自粛要請が始まって以降、逆に客足が伸びているという。 「緊急事態宣言により雀荘やパチンコ店が閉鎖されて、遊べる場所がほとんどなくなりました。繁華街の客引きやキャバクラのボーイ、ホストだけでなく、飲食店で働いている人など、多くの人がヒマを持て余していて、違法カジノに流れています」(草下氏、以下同)  違法カジノは東京・歌舞伎町だけで50カ所ほどあると言われており、客の側も賭博罪で逮捕されるリスクがある。 「オリンピックに向けた浄化作戦と、3月に警察が予算を使い切らなくてはいけないという背景から、コロナ直前の3月10日には都内で大規模な一斉摘発がありました。業界全体が萎縮するなかでコロナ騒動が持ち上がり、追い風になっています」  草下氏は、自身のツイッターでも次のようにツイートした。 「自粛要請にじっとしていることができず小銭が余っている人間にとって、最後の遊び場となっているのがアングラ博打。冷え込む飲食店とは対照的に、客の入りはいい。だが、それも長くは続かないはず」

違法カジノの三密具合は最悪

 違法カジノの多くは地下や窓を封鎖した密室に設置されており、まさに“三密空間”でプレイすることになる。闇スロは通常のパチンコ店のように客同士が隣合っていて、インカジもネットカフェのような密度だ。 「換気もできないような場所が多いので、クラスター化する可能性は大いにありますね。それでももちろん、表ざたにはならないでしょう。故に、余計にタチが悪い」  しかし、裏社会の人々のコロナに対する警戒心には個人差があるが、最近では、入場前に検温をするカジノもある。自営のためには当たり前と言えば当たり前かもしれないが。 「裏社会の人々はもともと遵法意識が低いこともあり、自粛要請に応じないケースが比較的目立ちます。『社会に迷惑をかけてはいけない』という価値観は持っていないため、一般社会に比べると、コロナウイルスへの警戒心が薄い人のほうが多いでしょう。居酒屋で普通に飲んでいる人もいます」  東京・神奈川・埼玉・千葉のパチンコ店が休業になったため、わざわざ茨城まで遠征に出るパチンコ愛好者も出現し、ネット上では“パチンカス”と非難されている。 「コロナを無視して遊び続ける彼らは、ある意味、裏経済の最後の砦であり、生命線とも言えます。とはいえ、彼ら自身がコロナを感染させて丸ごとぶっ壊してしまう可能性もありますが」  これまでと比べてレート変動などは特になく、幅広い年代が集まっている。 「ほかに行く場所がないんでしょうね。大阪の色街・飛田新地や信太山新地は全店休業となりましたが、閉鎖の直前は駆け込み需要で客足が伸びていました。歌舞伎町などの繁華街でも、一部の風俗店は盛況です」  休業を決める店舗が多いからこそ、そのなかで強行して営業を続ける店舗に客が集中してしまうのだ。 「違法カジノも風俗店も、カネと女という意味で人間の欲望が集まる場所ですよね。最後まで欲望から離れられない人たちが一定数いて、クラスター化する恐れがあります」  罰則なしの“要請”では、どうしても限界がある。裏社会であれば、行政のお願いが届きにくいのは当然かもしれない。強制力のある法律や政策が実施される前に、コロナが収束すれば良いのだが。 <取材・文/西谷格> 草下シンヤ氏 出版業界歴20年を超え、裏稼業やサブカル系に精通。『裏のハローワーク』『半グレ』『ハスリンボーイ』『D.O自伝 悪党の詩』『雑草で酔う』『売春島』『ルポ西成』など、ヒット作に多く携わる。文庫化された『半グレ』が好評発売中
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