災害に強い街のつくり方
―[先祖伝来の[大津波伝承]に学べ]―
東日本大震災で多くの人の命を救ったとされる先祖代々語り継がれてきた大津波伝承。そこで、小誌取材班が全国各地に今なお残る大津波にまつわる言い伝えを徹底調査。実際に現地を訪れ、風化しつつある先人たちの津波警告をリポートする!
◆菅総理が知らない「災害に強い街のつくり方」
津波伝承からもわかるように、今回の大震災を受けて菅直人首相が主張する「山を削って高台に住むところを置くべき」という都市計画は、そう簡単にはいかない。
都市防災に詳しい防災都市計画研究所所長の吉川忠寛氏が言う。
「津波災害の後、低地に利用規制をかけて高所移住が進められた過去のケースを見てもわかるように、時間がたつと利便性を求めて低地に住む人が必ず出てくる。津波経験の風化、防潮堤などの施設の“充実”により、安心してしまうのです」
防災に強い街づくりと被災者の生活再建は必ずしも同じ方向を向かない。この点が非常に難しい。
ひと筋縄ではいかない防災都市計画だが、肝心なのは「ハードとソフトが融合した街づくり」だという。
「防災対策のハード面を整備するだけでなく、あえてリスクを強調し『だから気をつけよう』と住民自身の意識を高めることも重要。危険性を認識させ、どう対処するかを地域で考えさせる。『リスクコミュニケーション』と呼ばれるもので、地域全体の防災意識の向上にも繋がる」
被害は地震や津波の“外力”の規模だけで決まるわけではない。
「土地利用のあり方や地域の防災対策などの“内力”との関係で決まる。高所移住したからといって油断せずに対策などを練り、人々に防災意識を根付かせ続けることこそが安全への第一歩」
津波伝承も、災害に強い街づくりにひと役買っているというわけだ。
【吉川忠寛氏】
’64年生まれ。防災都市計画研究所所長。日本都市学会常任理事。「まちづくり計画策定担い手支援事業」(国土交通省)など国、自治体などの都市計画も担当している
’取材・文・撮影/内田ヨウ 鈴木大介 写真提供/徳島県南海地震防災課 防災システム研究所
― 先祖伝来の[大津波伝承]に学べ【7】 ―
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