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吉祥寺、戸越銀座の「自粛無視」報道写真のウソ

報道写真で駆使されるカメラテクニックの数々

 望遠レンズによる圧縮効果を生かした写真は報道の世界ではさして珍しいことではない。今年の2月上旬から始まった羽田新ルートの試験飛行の報道でも、いろいろな報道機関が圧縮効果を利用し、航空機が建物と接触スレスレで超低空飛行する写真を掲載した。報道写真の役割について、朝日新聞社の元写真部次長であるジャーナリストの徳山喜雄氏はこう話す。 「欧米に比べ、日本の報道写真は表現力が乏しいと揶揄されることがあります。読者の目を引くために技巧を凝らし、誇張した写真をよく使うのはその証し。私が入社した30年以上前からこのスタイルは変わってません。“伝統芸”です」
「自粛無視」報道写真のウソ

徳山喜雄氏

 報道写真は記事に説得力を与える“添え物”と言われることも。 「代表的なのは震災や災害での写真。文章で事細かに被害状況を説明し、全体を俯瞰した写真が一面を飾る。記事に説得力を与えるための情報量が多い、説明的な写真になりがちなのもそのためです」  報道写真で頻繁に使われる撮影テクニックは他にもあるという。 「望遠レンズと並び、使われる頻度が高いのは広角レンズ。近いものはより近く、遠いものはより遠くに写せるので、デモ中に道路に投げられた火炎瓶から出る焚き火ほどの炎でも、街中が燃えているような激しさを演出できます。また、シャッター速度を遅らせるほど、動感が生まれ、朝の通勤ラッシュの混雑ぶりや、火事や地震から逃げる人たちの悲壮感、そんな雰囲気の写真に仕上げられます」  下から煽って撮影すれば威圧的な指導者を印象づけられるとか。 「他にも、護衛される容疑者を撮影する場合、正面からストロボを焚くと表情が乏しくなります。代わりに斜めから入るテレビ局の照明を利用することで顔に陰影を生み、それまでの人生が滲み出た表情を写し出すこともできます」  今回、「過剰な撮影テクニックを使うと現場の臨場感や雰囲気とかけ離れ、素人には印象操作に見えてしまいます」とおおつね氏が言うように、ネット上では“偏向報道だ”という声も多く上がった。だが、「報道側の意図が反映されていたとしても、切り捨てるのは早計」と前置きした上で、報道写真との向き合い方を徳山氏は語る。 「現場で撮影している以上、写真には何かしらの事実が写し出されています。また、同じ現場でもメディアの視点や立場によって見せ方は違うし、それは完全なウソとは言い切れません。むしろ、切り取られなかった世界を想像しながら発信者の意図を見抜こうとする、そんな姿勢が大切です」
「自粛無視」報道写真のウソ

おおつねまさふみ氏

 行きすぎた報道写真は決して許されることではない。だが、写真でありのままを伝えるのは難しい。情報が錯綜し混乱を極める今だからこそ、100%鵜呑みにするのではなく、一旦立ち止まって自分なりの考えや答えを出そうとする。そんな姿勢が見る側にも求められているのだ。 【おおつねまさふみ氏】 30年以上ネット観察をしてきたネットウオッチャーの代表的存在。緻密な観察と批評は定評。炎上対策会社MiTERU代表取締役 【徳山喜雄氏】 立正大学教授。朝日新聞社で写真部次長、AERAフォトディレクターを経験。著書に『新聞の嘘を見抜く』(平凡社新書)など <取材・文/谷口伸仁 写真/赤祖父 松本ときひろ> ※週刊SPA!5月12日発売号より
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週刊SPA!5/19号(5/12発売)

表紙の人/ 乃木坂46

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