日本でテレワークなんて浸透しないと思っていた
新型コロナが日本でパンデミック化する前に、
「これがテレワークのきっかけになればいい」とネットコラムに書いた学者(だったと思う)がいた。その学者は通勤の労力がいかに無駄であり経済的な損失になっていることに社会が気づくだろうと語っていた。まだテレワークなど話題になっていなかった時だった。
私はそんなことありえないと思った。台風などの災害時に帰宅困難になるサラリーマンのニュース映像を思い出した。こうなることは分かっていながらなぜ出社するのだろうと、ニュースを見るたびに思っていた。
忠誠を態度で見せることを強いる日本の会社社会ではテレワークなど絵空事に思えて、鼻で笑って読み飛ばしたために、今その記事を再び検索することができない(ごめんなさい)。
テレビ番組の『あいつ今何してる?』(テレビ朝日系)で、ホラン千秋の高校の同級生がカナダでテレワークのベンチャー企業に勤めている様子を紹介していた。AIの精度を上げるために、情報をインプットする単純作業を世界中の人たちに「内職」のような形で提供する会社である。
この同級生の彼女にはずっと「世界をより良くしたい」という夢があり、この仕事は世界中の人に仕事を提供でき、社会的にも身体的にも、様々なハンディキャップを持つ人たちの大きな助けになるはずだと胸を張る。この仕事を見つけたとき彼女は「出会っちゃった(ハート)」と思ったそうだ。この番組で私は、テレワークが世界の潮流であり
新しいビジネスチャンスの1つになってことを知った。冒頭の学者もこのことが頭にあってのコラムだったのだろう。
話は変わるが、3月25日に放送されたこの『あいつ今何してる?』には志村けんも出演していて、なんと昔の恋人を紹介した。なんだか未だに信じられない。夢を見ているようだ。
今後テレワークが日本の社会にどの程度浸透するかはわからない。しかし、早速、その影響をダイレクトに受け変化を余儀なくされているのがテレビのバラエティー番組だ。
どの番組もタレントがテレワーク出演をしている。フジテレビは早速『おうちで遊ぼう』なる完全テレワーク番組を立ち上げてしまった。進取の気質のフジテレビらしい。目新しさにまず目が止まる。ただこの番組においてテレワーク演出の意義は、今のところ
タレントのプライベートが見られるということにとどまっている。
『お家で遊ぼう』は2020年05月30日までFODにて無料配信中
プライベートが覗けると言うだけでは、テレワーク演出を根本的に活かしているとは言えないかもしれない。しかし、貴重なプラスアルファではある。ロケVTRを見るタイプのバラエティー番組は
「スタジオの意義」を作り出すことに苦労をする。本来ならば『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ系)のようにVTRのみで良いはずなのだが、たいていのバラエティー番組はVTRにプラスしてスタジオパートがある。時には全く意味がない番組もある。そんな時プライベートが覗けると言うだけでも少し意味を持たせられる。今後スタジオパートをテレワーク出演にする番組が登場するかもしれない。また、テレワークゲストなんていうのもあるかもしれない。「ニューヨークの綾部さん呼んでみましょう」なんて言うことも。
今後テレワークを生かしたテレビがたくさん登場したら面白い。世界中の人達と繋いで世界のニュースを論じ合う、お一人様キャンプが流行っているようだからキャンプ地をつなぐ、超巨大人数参加のクイズ番組などできないだろうか? テレワークによりテレビバラエティーの新機軸が生まれればきっと世の中全体に影響があるだろう。もしかしたら
「より良い世界」作りの小さなきっかけになれるかもしれない。
ところで、テレワークで出演する時、タレントも
「プライベート感」を意識した服装をしているのがなんだかおもしろい。『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演する今田耕司はなぜだかいつも眼鏡をかけている。『お家で遊ぼう』の髙嶋政宏はなぜか
初期のポリスのバンドTシャツで出演していた。でもスタジオ収録とテレワーク出演で、身だしなみに違いがあるのってなんか変。でもドレスを着て家のリビングに座ってたらそれこそ変か。
1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。ツイッター
@mo_shiina