更新日:2020年09月07日 16:00
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色黒の角刈り男が熱弁を振るう、持続化給付金「不正受給セミナー」に潜入

セミナー商法はクーリングオフの対象外

 自宅に帰ってから、彼らがセミナー内で繰り返していたキーワードなどをツイッターやグーグルで検索してみたところ、セミナーを主催しているのは「L」という株式会社であることがわかった。また、SNSや掲示板では「詐欺」「騙された」といった数々の悪評もヒットしたのだった。そうした悪評のなかには、新型コロナ対策の経済支援策が次々に打ち出されるようになった今年5月以降に書き込まれたものも多かった。  セミナー内で上映されていたビデオに登場していた行政書士については、実在することがわかり、電話でコンタクトを取ることに成功した。  その人物は、セミナーを主催するLとのつながりは認めたものの、「何度か顧客を紹介してもらったことがある関係で、ビデオに出演した。違法なことは何一つやっていない。『50万円で士業使い放題』というサービスについても知らないし、被害を訴える声についても知らない」と主張した。  また、ツイッター上で被害を打ち明けていた飲食店経営者Kさんにダイレクトメッセージで話を聞くことができた。  新型コロナの影響で傾いた店の経営を立て直すため、補助金を利用しようと考えていたKさんは、今年5月半ばに問題のセミナーに参加。「専門家に相談し放題なら」とセミナー会場で、50万円をクレジットカード決済したという。その後、すぐにサービスを利用しようと思ったものの、士業への相談はメールのみで、電話や面会での相談、さらに申請書作成などは別料金だったという。  これについて、「L」に問いただしたところ、「『すべて追加料金なし』とは言っていない」の一点張りだったそうだ。確かに契約書にも「50万円で使い放題」の範囲についての言及はなく、消費者センターに相談したものの匙を投げられ、セミナーを受講しての契約は「クーリングオフの対象外」とも言われたという。 ――「会社員や主婦でも持続化給付金をもらえる」と、SNSを中心に悪質なセミナーの勧誘が増えている。すべてのセミナーが不正受給を指南したり、悪徳セミナーというわけではない。しかし、奥窪氏が潜入したような悪質なセミナー商法があるのも事実である。セミナーを受講しての契約は「クーリングオフの対象外」ということもあるので、少しでも迷ったら大金を支払う契約はせず、断る勇気を持つべきである。
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~

詐欺師や反社、悪事に手を染めた一般人まで群がっていた
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