更新日:2020年09月07日 16:00
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色黒の角刈り男が熱弁を振るう、持続化給付金「不正受給セミナー」に潜入

受講生をカモにする、悪質な“セミナー商法”?

持続化給付金不正受給セミナー

奥窪氏が潜入した補助金・助成金の受給セミナー。サクラの受講生も紛れ込み、いわゆる“セミナー商法”と呼ばれる古典的な悪徳商法だった

 カルテを提出すると、スタッフによって一人ずつ会場に案内された。席は指定されており、自由に選ぶことはできない。複数で来場した受講者もいたが、それぞれ離れた席に座らされていた。  開始時刻の午後4時を過ぎても、講義は始まらなかった。その代わり、女性スタッフがマイクを握り、セミナー受講の注意点を読み上げ始めた。まず、スマートフォンの電源を切ったうえ、鞄にしまうこと。録音や撮影は「ほかの受講者のプライバシー侵害になるため」厳禁。さらには、「悪徳業者が入り込んでいる可能性も否めない」として、受講者同士の連絡先交換もしないようにクギを刺された。  この段階で、「おや……」と思い始めた。  これまで何度か取材経験のある、ネットワークビジネスや、仮想通貨のICO(イニシャル・コイン・オファリング、仮想通貨を使った資金調達)の詐欺グループらによるセミナー商法でも、同じような禁止事項が並べられるからだ。  当初、このセミナーは補助金や助成金の不正受給を指南し、申請者からその上前を跳ねるようなビジネスモデルであろうと疑っていた。しかし、彼らが受講者に課す禁止事項の数々から、受講生をカモにする“セミナー商法”である可能性が浮上してきた。  余談だが、同じセミナーには、同業のフリーライターも一人潜入しているはずだった。ところが会場を見回しても彼の姿がない。後から聞いた話だが、彼は受付時に、間抜けにも実名で記帳したところ、セミナーのスタッフに身元を検索されたらしく『ネットで記事を書かれてる方ですよね? そういう方はお引き取り願います』と言われ、門前払いを食らったのだという。そんな警戒心の強さは、それだけ後ろ暗いことがあるということなのだろう。
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セミナーに紛れ込むサクラの受講生
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1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~

詐欺師や反社、悪事に手を染めた一般人まで群がっていた

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