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なぜ、個人タクシーは嫌われる?その構造を紐解く

個人タクシー

個人タクシーを毛嫌いする理由

 タクシー乗り場でタクシーの長い列。もうかれこれ1時間も並んでいる。前に並ぶのは個人タクシー。ロング客の期待を胸に、いよいよ前の個人タクシーに順番が回ってきた。しかし、乗った乗客はすぐに降り、こちらの車に乗り込んで来た。 「近いからって、断られたよ。長い時間待った意味がないとまで言われたよ」  と憤慨の様子であったが、流石にこちらも  「私も長い時間待ったんですが……」  なんてことも言えない。乗客には何も関係ないことだが、個人タクシーの近くにいると時々このようなことがある。  車の天井にある「提灯」「でんでん虫」の行灯を毛嫌いする人は少なくない。その行灯が象徴的なのが個人タクシー。高級車や個性ある室内を施したりと法人タクシーと一線を画しているが、タクシー乗り場などに並んでいると個人タクシーを避けて乗ってくる人や目の前を走る個人タクシーを見過ごし法人タクシーに乗る人がいる。  このような乗客のほとんどが、個人タクシーに乗って嫌な思いを経験している。 ・近い距離だと断られた ・態度が横柄 ・遠回りされた ・無愛想すぎる ・万札だして怒鳴られた ・根掘り葉掘りプライバシーを詮索された  他にも「聞きたくもない歌を永遠と聞かされた」などなど。  しかし、個人タクシーのドライバーのすべてがすべてということではない。素晴らしいドライバーも沢山いるし、法人タクシーのドライバーにもこのようなドライバーはいる。あまりいい印象をもっていない人が多い個人タクシー、果たしてどうなのか。

個人タクシーはエリート中のエリート

 正直、タクシー会社に勤めようと思ったら、運転免許と健康な身体さえあれば、誰でも出来る。しかし、同じような感覚で「個人タクシーでもやろうかなぁ」と思っても、そう簡単になれるものではない。なるには最低以下の条件をクリアしなければなることはできない。  タクシー会社に10年以上勤務し、なおかつ10年間無事故無違反であることが条件となる。(これは35歳未満の場合。年齢が上がるかにつれ緩和される)毎日のように運転して無事故無違反は、なかなか至難の技。これだけでもかなり高いハードルだが、開業するにあたっての資金も必要となってくる。  営業区域により異なるが、設備資金で約70万円以上、運転資金として約70万円以上合わせて140万円を用意することが絶対条件である。また、タクシー協会に入会するのであれば、預貯金口座の200万円以上の預金があること証明する必要もある。そのため、最低限200万円は申請に必要である。  これで晴れて個人タクシーになれると思っても、そうは問屋が卸さない。  個人タクシーを開業するには、許可を受けなければならない。その許可には新規許可と譲渡譲受許可があるが、新規許可の制度に関しては様々な規制等のために現在は募集しておらず(営業区域によるが東京ではしていない)、譲渡譲受許可のみでしか個人タクシーになることできない。  その譲渡譲受許可とは、個人タクシーを閉業したドライバーから営業権を譲渡してもらうことで、いわば、大相撲の親方になる為の年寄株と同じように引退や廃業した人から権利を譲り受けるものである。  したがって要件を満たしていてもすぐに個人タクシーにはなれない。順番待ちということもあるのだ。個人タクシーの道はなかなか険しい……。  なりたくてもなかなかなれない個人タクシー。世間で毛嫌いされている個人タクシーは、実はタクシー業界ではエリート中のエリートなのだ。
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なぜ個人タクシーのイメージは悪いのか
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