和牛なき「M-1」の準決勝。全26組の激闘を元ファイナリストがレポート
2020年は新型コロナウイルス感染拡大の観点からさまざまなイベントが自粛となり、例に漏れず「M-1グランプリ」も開催さえ危ぶまれたが、1回戦は無観客という異例な形でなんとかスタートし、「漫才は止まらない」の号令のもと走り出した。
そして、12月2日、ついに決勝進出者が決まった。
準決勝は例年通り、竹芝にある「NEW PIER HALL」。しかし、例年通りといかないのが客席で、当然のようにソーシャルディスタンスの観点から距離をとっての観戦となり、半分は空席という形が取られた。
それでなくても広い空間の「NEW PIER HALL」で、重い空気となる準決勝。これがドラマを生んだ。それも「M-1グランプリ」なのだ。
トップバッターは「ラランド」。今年ブレイクを果たした「フリー」の男女コンビである。ボケ担当で「尊敬する人としか飲みに行かない」と豪語するサーヤさん。こちらが「大丈夫か!?」と心配になるくらいハードルを上げているが、準々決勝で1度は敗北したもののネタ動画の視聴数ナンバーワンコンビだけが準決勝に勝ち上がれる「Gyaoワイルドカード」で復活するあたりはさすがの勢いである。しかし、かつてない重い空気に緊張感が露呈する。時の勢いでも押し込むことができず敗退。ワイルドカードでの復活コンビは敗者復活戦にも出場できないというルールがあるため、今年の「M-1」は終了となった。
2番手は芸歴2年目にして準決勝進出を果たした「タイムキーパー」。スーパールーキーではあるが、彼らの芸歴ならば異例の会場サイズであり、異例の空気だっただろう。敗退。この経験が彼らを強くし未来のチャンピオン候補へと突き進むだろう。
3番手は「金属バット」。漫才の出来は非常によく、観客の笑いも大きかった。しかし……しかし……コンプライアンス的に危なっかしいのだ。それが彼らの魅力なのだが「地上波」「世の中」に送り出すには審査員も二の足の踏むところだろう。視聴者に委ねたいと考えてもおかしくはない。「敗退」というよりは「敗者復活戦」へ送り込んだと考えよう。
4番手は決勝に進出した「ウエストランド」。「金属バット」が変えた会場の空気をそのまま引き継ぎ、大きな笑いを作った。ワードセンスも抜群でハマれば決勝でも爆発するのではないかと期待できる。楽しみなコンビだ。
5番手は「ニッポンの社長」。6番手は「ランジャタイ」。この2組は4分というネタ時間に苦戦した感じに見えた。後半まで観客を引っ張りきれなかった印象である。バカバカしいコンビで大好きなコンビであるだけに敗者復活戦に期待したい。


◆Aブロック
「敗退」ではない「敗者復活戦に進出」なのだ
1972年、大阪府生まれ。1992年、11期生としてNSC大阪校に入校。主な同期に「中川家」、ケンドーコバヤシ、たむらけんじ、陣内智則らがいる。NSC在学中にケンドーコバヤシと「松口VS小林」を結成。1995年に解散後、大上邦博と「ハリガネロック」を結成、「ABCお笑い新人グランプリ」など賞レースを席巻。その後も「第1回M-1グランプリ」準優勝、「第4回爆笑オンエアバトル チャンピオン大会」優勝などの実績を重ねるが、2014年にコンビを解散。著書『芸人迷子』
⇒試し読みも出来る! ユウキロック著『芸人迷子』特設サイト(http://www.fusosha.co.jp/special/geininmaigo/)
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