更新日:2021年01月18日 12:59
仕事

「から揚げの天才」店舗急増で話題。テリー伊藤とワタミがコラボした理由

テイクアウト需要の増加と出店戦略が合致

 もっとも、2018年11月に大田区内に1号店である梅屋敷店をオープンし、約1年後の2019年10月時点ではまだ直営店3店舗にとどまっていた。ようやくフランチャイズ1号店ができたのは2020年2月で、当初の出店スピードは緩やかなものだったという。これが一気に加速したのは、今年5月頃のことだ。 「6~7月は月20店舗前後のペースで出店し、12月上旬には全国に70店舗を超える規模に。関東エリアだけでなく、大阪、京都、兵庫、愛知にも進出しています。コロナ禍でテイクアウトと中食の需要が高まってきたところで、一気に出店を進めるかたちとなりました。新店がオープンした際には、近隣さまへのご挨拶も兼ねて、テリー伊藤さんにみずから足を運んでいただいています」
から揚げの天才

一際目を引くテリー伊藤氏の愛くるしい人形は、子供たちからも大人気!?

 コロナ禍にあっては多くの飲食店が閉店に追い込まれたが、その空き物件を埋めるようにテリー人形と本人が街にやってきたというわけだ。 「居抜き物件を狙っているように見えるかもしれませんが、それは結果的にそうなっただけで、すべては立地条件ありきの出店戦略です。これまでの居酒屋業態では乗降客数の多い駅前の一等地を攻めてきましたが、『から揚げの天才』では打って変わって、住宅地やベッドタウンにある商店街が主戦場です。1号店を出した梅屋敷も、京急蒲田という大きな駅の隣の、各駅停車しか停まらない駅の商店街ですからね。また、テリーさんの気持ちとして、昔ながらの商店街を元気にしたいという思いもあり、そうした点も踏まえて出店先を検討しています」

コロナによってワタミグループも業態の転換を迫られた

 コロナ自粛により大人数での会食の機会が減ったことで、ワタミグループの主力である居酒屋業態も大打撃を受けた。苦境打開の一手として、居酒屋業態のうち、3割ほどの店舗を焼肉店に転換していく方針だ。 「『焼肉の和民』への転換もそうですが、今後、会長の渡邉は居酒屋そのものの市場が縮小すると考えており、ほかの芽を考えないわけにはいきません。居酒屋で培ったノウハウをどう活かすかを考えたときに、居酒屋業態では必ず人気ベスト5に入る、から揚げに特化した専門店で勝負をしたということです。『から揚げの天才』、『焼肉の和民』、韓国のフライドチキン『bb.qオリーブチキンカフェ』、これら3つを、グループの事業の柱として育てているところです」  コロナによるテイクアウト需要の増加、住宅街を中心とした出店計画が見事にハマッたから揚げの天才。だが、人気の秘密はそれだけではない。そこには乱立するから揚げ専門店と差別化を図るための秘策があった。その秘策の裏には外食チェーンで培われた“当たり前のこと”があった。(※近日公開予定の後編に続く)
様々なメディア媒体で活躍する編集プロダクション「清談社」所属の編集・ライター。商品検証企画から潜入取材まで幅広く手がける。
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