お金

馬券を買う勇気と買わない勇気。借金500万円男を悩まし続けるギャンブルへの渇望

流されて大阪杯はグランアレグリアで勝負!?

「なあ、大阪杯何買う?」  誘惑の手というものは、病気と同じく人を待ってはくれないのだ。 「一番人気がコントレイル? 全然違う。もうグランアレグリアで決まりやから。アーモンドアイをちぎった脚は出来が違いすぎる」  この日までの6日間で、出走表を見なくても人気上位6頭くらいまでの馬の名前は覚えてしまっていた。ジャパンカップでの記憶が残っているのでコントレイルの強さだけ覚えている。そんな馬がいるにも関わらず「全然出来が違う」と言わしめた馬、グランアレグリア……。  競馬素人に有りがちなのが、自分が買った馬と、直前に買うか悩んだ1番人気の馬の記憶しか残せないという事だ。とんでもない仕上がりの無名の馬がいたとして、その記憶は次の馬券を買う時にはすっかり忘れてしまっている。  僕の馬に関する記憶はジャパンカップでのアーモンドアイ、デアリングタクト、コントレイル、あとは自分のお気に入りのカレンブーケドールで止まっていた。ギャンブルに関する知らない情報はすごく魅力的に見えてきて、ポッと出のグランアレグリアが知る人ぞ知る名馬で、買った人間だけが勝者への扉を開けることができるとさえ思ってきた。  競馬や競艇で勝つために本気で取り組まない人間が簡単に他人の予想を買うのは、そこに書いてある情報を持ってないと勝てないかもしれないとまで思うからだ。裏を取る能力も無いから、たとえ間違っていても買う瞬間まで納得できる。バカが騙される構図がここに出来上がった。

netkeibaで自信のドーピング

 グランアレグリア、聞けば聞くほど重厚そうな名前だ。やっぱり強いのか。ど真ん中から馬群を蹴散らして一騎当千する未来が見えた。  大阪杯は、翌日に迫っている。  帰ってからnetkeibaというサイトで馬の過去レースを見た。このサイトには馬についての情報がザッとまとめられてあり、見るだけで十分調べた気持ちになれる。自信のドーピングだ。受験生時代、赤本と呼ばれる受験問題の過去問集を流し読みをして頭が良くなった気になるのと同じ効果を得る。  グランアレグリアから4頭ほど馬単でオッズを調べると40~80倍になった。競馬は同時にたくさん走るので、1番人気の馬を1着に置かないだけで50万近くの夢に手が届く。オッズを見ているだけで笑顔が止まらなかった。1万円ずつ賭ければ先週届いた裁判所とのやり取りも金で解決できる。  その日は夜更かしをして、夜中の3時に寝た。
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勝負の日は雨だった……
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