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効いてきてしまった改憲派の「嘘」宣伝。改憲派vs護憲派の公開討論を憲法学者の重鎮が提言

改憲「賛成」が「反対」を凌駕

日本国憲法 5月3日(憲法記念日)の朝日新聞の報道によれば、「今の憲法を変える必要があるか?」という全国世論調査の結果は、「必要」が45%で「必要なし」が44%であった。これは7年ぶりの逆転である。同日付の毎日新聞でも、改憲について「賛成」が48%で、「反対」が31%であった。  これで、自民党の憲法改正推進本部などは、「これまでの運動の成果だ」と大いに盛り上がっていることだろう。  改憲が必要だとする理由を見てみると、自民党が常々広報している理由そのままである。つまり、第一が「国防の規定が不十分だから」で、第二が「古くなったから」で、第三が「米国からの押しつけで、日本の国柄が反映されていないから」である。  しかし、これらの理由は、私などが機会がある度に指摘しているように、あからさまな無理か、一方的な主張である。

背景にある「改憲派」の「嘘」

 まず、改憲派は、「現行憲法は国防を禁止している」とか「現行憲法は命を懸けて国を守っている自衛隊を『違憲』と言わせている」などと主張している。しかし、政府自民党の公式見解は次のものである。 ①9条1項は「国際紛争を解決する手段としての戦争」、つまり(国際法上の用語例に従い)「侵略戦争」のみを禁じている。 ②また、わが国も国際法上の自然権として自衛権は有しており、それは国連憲章51条で確認されている。 ③しかし、9条2項が国際法上の戦争の手段としての「戦力」と戦争の資格としての「交戦権」を禁じているので、わが国は海外に戦争に行けない。 ④だから、65条の「行政権」に含まれる警察(警察庁+海上保安庁)の能力を超えた攻撃を受けた場合に対応する能力を備えた第二警察(自衛隊)が日本の領域と周辺の公海と公空を用いて排除する。 ⑤要するに、専守防衛に徹する自衛隊は合憲で、わが国は、9条により、多国間の紛争には介入しないが、わが国への侵略は許さない国なのである。  また、憲法は、上衣や靴とは違い、単に「古くなった」ら当然に変えるべきものではない。時の経過の中で現実の政治と矛盾する条文が出て来た場合には、現実と条文のどちらを改めるべきか? という真摯な議論が先行すべきものである。その点では、9条を変えて米軍の二軍になることと9条を守って専守防衛に徹することの比較検討がまず行われるべきである。また、新自由主義という弱肉強食の資本主義と25条が保障している福祉国家のいずれが正しいか? がまず議論されるべきである。  さらに、「現行憲法は、米国から押しつけられて、日本の国柄が反映されていない」と言うが、その「国柄」と言われる「明治憲法体制」が日本の2000年の歴史に照らして真にわが国の国柄なのか? の議論が必要である。また、天皇主権、専制、軍国主義、覇権主義の国家が敗戦で生まれ変わったことの歴史的意味をまず再考してみるべきであろう。  だから、この世論調査に答えた人々は、改憲の論点について深く考えてはおらず、改憲派が喧伝している一方的な「嘘」を吟味せずに受け売りしている状態だと言えよう。
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