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安倍氏の国葬に反対するのは“非国民”?勝手に決めるな/倉山満

自民党は横暴な振る舞いをしているが、民主政治とは説得の政治だ

 ズレているのは、岸田自民党の方だろう。そもそも、選挙は何のためにやるのか。根本的には、政治の決定で殺し合いをやらないためだ。ただし、投票箱を持ち込んで多数決をやれば、即座に民主主義になるのではない。民主政治には、三つの要素がある。第一に、言論の自由。第二に、最終的な多数決。第三に、再挑戦の機会保証。  民主政治が殺し合いではなく話し合いの政治である以上、全員がまとまれば必ずしも投票の必要はない。だが、国政においては稀である。だから選挙によって決着させると最初から決めておくだけだ。別に多数派が正しい訳でも何でもない。そしてその多数は決して永遠に固定されるものではない。必ず何年か後に選挙は行われ、少数派は多数派になる再挑戦の機会が得られる。  すなわち、民主政治とは説得の政治なのだ。多数を得るために、全体を説得する。任期が終われば必ず選挙があるので、多数派は多数派であり続けるために説得を続けなければならない。

敵は単に立場が異なる者であり、悪魔でも犯罪者でもない

 そして、少数派は政権与党にとって敵かもしれないが、犯罪者ではない。犯罪者は悪だが、敵は単に立場が異なる者だ。状況が変われば味方になるかもしれない。そもそも、民主政治における与野党は、主張や背負っている利害が異なるだけで、同じ国民だ。  ところが、世界的に保守とリベラルの「分断」が激しくなりすぎた。日本も然り。親安倍の保守も反安倍のリベラルも、お互いを悪魔のように罵る。まるで宗教戦争だ。近代化とは宗教戦争からの決別、「立場が異なる敵であっても、同じ人間ではないか」との思想から出発した。  それを我が国では、政権与党の方から挑発している。岸田首相は、自民党総裁選、衆議院選、参議院選と、すべての選挙に勝った。なぜ自信を持てないのか。
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選択肢のない日本では、政権与党が無限大に増長する
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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