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母が「末期がん」と宣告されて目の前が真っ暗に…それでも「心の健やかさ」を保つには

「なんとかなる」と思えなかった

 また、外科手術ができず打つ手が少ない状況に「なんとかなる」ともなかなか思えません。自分を奮い立たせようと、過去の経験を引っ張り出してきて「なんとかなるだろう」と考えるようにしても、その場で適切な手段が思い浮かびません。  母とは別々に住んでいたのですが、特段の用がなくても電話やLINEなどで頻繁にコミュニケーションをとっている関係です。だからか、「どうしてこんなことになったのだろう。もっと早く気づいてあげられたら……」などと、堂々巡りで考えてしまいます。 「どうしてこんなことに。母のこの病気になんの意味があるのか」と思えてしかたありません。私はこれからどうしたらいいのでしょうか。

スタンプカードを破り捨てる母の後ろ姿

「なんとかなる」と思えるレッスン

舟木彩乃『「なんとかなる」と思えるレッスン 首尾一貫感覚で心に余裕をつくる 』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 このご相談から、普段は首尾一貫感覚が高めの加藤さんですが、突然のお母様の末期がん宣告という状況に、首尾一貫感覚が低くなってしまっていることがわかります。「把握可能感」も「処理可能感」も低くなってしまっており、「なんとかなる」とはどうしても思えない状況です。  このような強いストレスのある状況で、加藤さんはどうしたらいいのでしょうか。  加藤さんの先ほどのお話には続きがあります。加藤さんはある晩、今まで貯めてきたお気に入りのショップやレストランのスタンプカード(来店ごとにポイントが貯まるカード)を破ってゴミ箱に捨てているお母様の後ろ姿を見たそうです。  声をかける雰囲気ではなかったけれど、目が離せない光景だったとのこと。加藤さんのお母様は、もうスタンプを最後まで貯めることはないと思ったのかもしれませんし、期限がついているものを身のまわりに置きたくなかったのかもしれません。
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恩返しすることに意味がある
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ストレスマネジメント専門家。企業人事部や病院勤務(精神科・心療内科)などを経て、現在、株式会社メンタルシンクタンク(筑波大学発ベンチャー)副社長。カウンセラーとして約1万人の相談に対応し、中央官庁のメンタルヘルス対策や県庁の研修にも携わる。著書に『「なんとかなる」と思えるレッスン 首尾一貫感覚で心に余裕をつくる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある

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