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マクドナルドは売上高・営業利益ともに過去最高を更新。モス、ケンタ…“競合チェーンとの違い”は明白

400円の壁に苦しむハンバーガー業界

モスバーガー

rai – stock.adobe.com

市場規模は約7,000億円市場と推計され、市場自体は僅かだが伸びている。 昔はデフレの象徴とも呼ばれていたが、ここ数年の値上げブームでハンバーガー価格も上昇傾向にある。実質賃金が上がらず節約志向が高まる中で、個人消費も力強さを欠いている消費事情。 消費者が求める価格と店の価格は乖離している状態だ。ハンバーガー業界もあらゆるコストの上昇で、収益が上がりにくい経営環境の中で戦っており、ハンバーガーの400円の壁を一つの基準にしながら、成長を模索している段階だ。 かつてはデフレの勝ち組だったマクドも、半額(65円)バーガーを販売し、他社が真似できない低価格戦略で市場シェアを高めた時期があった。それに負けじと、各社も追随し価格競争が激化したのである。 合理的基盤ができてもいないのに、単に追随型のディスカウント戦略を展開し、早々にやめて価格を元に戻すなど失敗した店も出現し、混乱した時期であった。 コストリーダーで仕掛けた先駆者のマクドも、今は定番商品の価格はビッグマック480円を中心に400円台が主力で、新商品もこの価格帯である。ハンバーガー単品が400円台ならドリンクやポテトをセットにしたら600円を超してしまう。 だが、この物価高騰の中、安売りは経営を圧迫するからできないのが実情で店は苦しい選択を強いられている。 働く人のランチ予算は452円(ホットペッパーグルメ総研の調査)となっており、完全にオーバーする価格設定だ。お客さんの動向を見ながら、適切なプライシングが重要となってくる。

FC比率増加と客層の幅広さで他社を圧倒

1971年創業今年54年目であるマクド。経営環境の変化に柔軟に対応する為、日々進化を続けている。 運営形態もフランチャイズ店(以下、FC)の構成比を徐々に上げている。これは固定費を低減させて損益分岐点比率を引き下げ、経営効率の向上とリスク分散を狙える。 2008年、リーマンショックを契機に、より一層FC比率を高め、経営基盤を強固にした。FC展開も社員の暖簾分けだけでなく外部からの募集も積極的に進め、現在、FC比率は約7割だ。 直営店で実績を作ってから、FCオーナーに譲渡するパターンも多い。新たに始めるオーナーは既に実績と顧客基盤があるから、早期回収に期待ができる。 マクド本体も譲渡した店舗が変動費化できるから、リスクは低減できるのでお互いが最適のはずだ。今は、マクド232人のFCオーナーと志を同じにし、経営理念共同体として、共にブランド価値向上に向けて、一体感を醸成させている。 店舗数の平均所有は1人当たり10店舗と多く、それだけ経済的にも価値があることの証明であり、平均年商も約20億円あるそうだ。 マクドの創業者が提唱し全世界の店舗で日々実践しているQ(品質)S(サービス)C(清潔さ)&V(価値)を実践し、各店がブランド価値の向上に努めている。 客層は幅広く、ファミリー層、若年層、会社員を標的顧客に設定している。 ファミリー客には「家族での食事の場」を提供。若年層に対しては、飽きの来ない新メニューやトレンドに合わせた商品を提案し、SNSなどでの拡散効果も狙っている。 忙しい会社員には短時間で食事が済ませられる利便性を提供。 それぞれのターゲット層に適した商品や企画の提供を通じて、業界首位の座をキープしているのだ。 また、社会とのつながりを大切にし、子供たちの未来がより幸せなものになるように、社会貢献活動(ドナルド・マクドナルド・ハウス支援・学童野球・食育支援など)にも取り組んでおり、こういった活動も評価されている。
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飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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