ハンバーガー業界で“圧倒的な差”をつけるマクドナルド。業界2位のモスバーガーに勝ち目はあるか
7000億円規模と推計されるハンバーガー系ファストフードの市場規模。各社が物価・人件費・物流コストなどの上昇で厳しい環境で戦っている。市場規模は安定はしているが、ハンバーガーの「400円の壁」というのが存在するのをご存じだろうか。
【ハンバーガーチェーンの店舗数(2023年4月時点)】
1位:マクドナルド2951店
2位:モスバーガー1292店
3位:ロッテリア308店
4位:バーガーキング186店
店舗数1位の「マクドナルド」と2位の「モスバーガー」はよく比較されるが、店舗数は倍以上の開きがあり、経営スタイルも異なる。
商品では大量生産で低価格イメージのマクドナルドと、価格は少し高いものの品質が高いイメージのモスバーガー。人通りが多い一等立地に出店するマクドナルドと、人通りが少ない2等立地に出店するモスバーガー。マニュアルを遵守した接客サービスのマクドナルドと、フレンドリーな接客のモスバーガーなど……ざっと挙げただけでも好対照な両社である。
店舗数ランキング3位のロッテリアは外食最大手のゼンショーから2023年4月に買収された。既存店舗の再生に力を入れながら、ゼンショーとロッテリアの融合で新業態であるゼッテリア(9店舗出店中、2024年5月時点)を出店したが、ゼンショーのハンバーガー業界への本格的な参入に注視したい。
4位のバーガーキングは前年比20%と急伸している。一度、日本から撤収したが、再上陸し、話題性ある企画などで若者を中心に人気だ。日本市場への攻めの姿勢が顕著であり、今は店舗数も少ないが競合店にとっては脅威な存在になるかもしれない。ちなみにバーガーチェーンの範囲を広げると、ケンタッキーは1194店展開している。
マクドナルドは1990年代~2000年代前半まで価格破壊で消費者を驚かせ、徹底した低価格路線で集客力を強化して規模の経済を発揮していた。「週末は家族でマクドナルドに行こう」などのイメージが定着し、幸せな家族の憩いの場といったブランドイメージもあった。
しかし、低価格路線を推し進めたため、若年層に限られた客席を占領され、ファミリー客が締め出されるようになってしまった。当然、業績が悪化したため2000年後半に入ると方針を転換し、価格帯の拡大と商品バリエーションの拡充で店の雰囲気の刷新を図った。
同時に高価格帯の商品の投入、味と品質重視の商品、ボリューム感ある商品の拡充、キャンペーン商品などの頻繁な導入で、主要顧客層であるファミリー客とその周辺顧客の囲い込みを図っていった。
マーケティングリサーチ会社のクロス・マーケティングが実施した「価格に関する調査(2023年)」(全国20歳~69歳の男女を対象)によれば、ハンバーガーの最適価格は307円。妥協価格は400円となっている。この壁を越えるために各社がさまざまな知恵を出しあっている。
しのぎを削るハンバーガー業界
ファミリー層の獲得を目指すマクドナルド
飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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