もし「ル・ペン大統領」が登場すれば、フランスは崩壊する!?
シリア難民大量流入やISによる連続テロに悩まされた’15年の国際社会。そんな今、極右が世界的に台頭したり、大国の強権外交が幅を利かせている!
テロの直接的な標的となったフランス。11月21日、フランス議会は「国家非常事宣言」を3か月延長することを決定。国境の封鎖やデモや野外集会は禁止、令状なしの家宅捜査・逮捕が可能な状態が続いている。そんな混沌とした仏国内で急激に影響力を伸ばしているのが、マリーヌ・ル・ペン党首率いる極右政党「国民戦線」だ。
同党はイスラム過激派の市民権を剥奪し、出身国に送り返すことや、国境封鎖などを主張。一部の有権者から熱烈な支持を集めている。12月6日に行われた地方選挙の第1回投票では、全12地域圏のうち6地域圏で首位となる躍進ぶりを見せた。だが、2回目投票では、すべての地域で敗北する結果となり、安堵した人も多いはずだ。
しかし、「今回の投票結果の推移には見逃せない点がある」と指摘するのは、欧州事情に詳しい日本経済大学教授の安井裕司教授だ。
「欧州ではグローバル化の影響で格差が拡大し、経済的に下層となった人々の受け皿として、反移民や反グローバリズムを主張する急進左派や、極右政党が躍進するという現象が起きていた。ただ、今回の地方選では、その下層の票が左派ではなく極右政党である国民戦線に集中した。危機感を抱いた社会党と共和党の2大政党が、第2回投票で苦渋の選択を行い、国民戦線の躍進を阻止した。こうした動きはこれまでなかった」
オランド大統領率いる社会党は第2回投票の際に、国民戦線がリードする2地域圏で自党候補者の擁立を中止。共和党に票を集中させ、国民戦線の勝利を防ぐというなりふりかまわぬ行動に出た。積年のライバルに与してまでも排除する――それほど、国民戦線の躍進を脅威として捉えているのだ。
「地方選の影響が、大統領選びに直結すると考えるのは早計ですが、国内の状況を見る限り、国民戦線の台頭は偶然ではない」(安井氏)
フランスでは’17年に大統領選が行われる。ル・ペン大統領が登場すれば、どうなるのだろうか。
「まず、国自体が壊れていく。自由や民主主義といったフランスを支えてきた価値観が崩れるわけですからね。また、国民戦線は反グローバル化や国家による経済統制を主張しています。危機感を抱いた企業が国外に逃げれば、経済的にも困難になる。フランスというEUの中心国が崩壊すれば、EUの理念にも亀裂が生じるはず」(同)
すでに、シリア難民問題やISの度重なるテロに、EUの理念が歪み始めている。その先にあるのはEU解体なのか。
取材・文/SPA!世界情勢取材班
― 2016年は[左派・リベラル]全面崩壊の年になる! ―
敗北した国民戦線を侮れない理由
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