選考委員が振り返る「日本カー・オブ・ザ・イヤー」
今年の日本カー・オブ・ザ・イヤーは、トヨタとスバルが共同開発した86/BRZ、クリーンディーゼルのCX-5、ガソリン、ハイブリッド、ディーゼルを取りそろえた3シリーズ、SUVにクーペのデザインを持ち込んだイヴォークなど、悩みどころ満載の10車種からCX-5が選ばれた。大接戦だった今年のCOTYを振り返る――
西村直人=文 Text by Nishimura Naoto
◆大接戦の末、今年のCOTYに輝いたのはマツダCX-5!
今年の日本カー・オブ・ザ・イヤー(以下、COTY)のイヤー・カーが、CX-5に決定した。エコカー全盛のなかで風穴を開けたイヴォークや、軽自動車にマッチした燃費改善技術「エネチャージ」を搭載してハイブリッドカーいらずの実燃費をたたき出したワゴンRなど、どれもがイヤー・カーの素質を十分に持っていたと思う。
選考委員として私が掲げた評価軸は以下の2点だ。
(1)パーソナルモビリティとしての素養があるか?
(2)30年後の自分が安心してステアリングを握れるクルマ作りがなされているか?
これは選考委員になった3年前からずっと言い続けていることで、今年もそれに照らし合わせて配点(※持ち点25点のうち1台に10点、残り15点をノミネートカーのうち4台に配点する規則)を行った。
2点のノートは1.2リッターの3気筒エンジンにスーパーチャージャーを付けて1.5リッター並みのゆとりある走りを狙った一方で、スーパーチャージャーを極力働かせない「ECOモードスイッチ」を搭載。燃費数値を大幅に向上させた。実際、車載燃費計ではリッター27.5kmをマークするなど、私が所有する同排気量の大型バイクより30%以上も低燃費だった。ただ、グローバルカー設計が仇となりマーチ、ラティオと同じく、乗り心地がピョコピョコと落ち着かないところが残念。
同じく2点のワゴンRは、19年前にデビューした初代から2倍に伸びた燃費性能を評価した。’98年の規格変更による大型化に加え、装備を充実させたにもかかわらず重量増はわずか20kg増に抑えられている。日本のCOTYである以上、新車販売の半数を占める軽自動車にスポットを当てないわけにはいかない。生産累計384万台以上を誇るワゴンRに敬意を表した。
4点のイヴォークは、世界中のクルマ好きが認めるオフロードの雄、レンジローバーの直系。SUVにクーペボディのような流麗なスタイルを持ち込むなど、新たな取り組みに感銘を受けた。ちなみに、450万円~という、従来のレンジローバーからすれば考えられない破格のプライスに後押しされ、発売直後に今年の日本割り当て分を完売している。
7点のCX-5に対しては、「クリーンディーゼル」、「スカイアクティブテクノロジー」といったマツダ渾身の技術に対する絶賛が多勢だったが、私は評価軸(2)のポイントに合致する点が多く、そこを評価した。人間工学上、乗り降りしやすいとされるヒップポイント(地面から運転席の座面までの高さ)700mm前後からの視界は、それに合わせてデザインされたインテリアとともに死角が非常に少なく、自ずと安全運転が行える。またステアリング、アクセル、ブレーキといった運転には欠かせない操作系に対して、通常の2倍以上に及ぶ開発時間&費用を掛けるなど、これまで当たり前とされてきた部分を見直したマツダらしいクルマと言えよう。
そして、私が10点満点を配したのが86/BRZだ。
※【後編】に続く⇒https://nikkan-spa.jp/347789
― 大接戦の末、今年のCOTYに輝いたのはマツダCX-5!【1】 ―
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