「意思と意志」「観賞と鑑賞」同音単語のビミョーな意味の違い
よ~く考えると違いが曖昧な似たモノは多く、また、個人の主観で定義が変わることもある。そんな「似て非なるもの」の違いを改めて調査! 些細な言葉の違いに込められた意味になんだか納得、なのである
◆雑誌や新聞で出てくる同音の非なるもの
例えば、【あし】。主に足首から下が「足」で、太ももから足首までは「脚」。【いし】は、持っている考えや思いの意味で法律用語に多いのが「意思」で、物事を成し遂げようとする心のことで心理用語に多いのが「意志」。【あとつぎ】にしても、家業は「後継ぎ」で、家元や家督は「跡継ぎ」……。
新聞や雑誌では、こうした同音でビミョーに意味が異なる言葉を使い分けている。それは、「大勢で作る雑誌や新聞では、ある種のスタンダードが必要」(本誌校閲・Kさん)なため。そして、そのスタンダードはSPA!の場合、共同通信社『記者ハンドブック』だ。
しかし、Kさんは「ハンドブックはあくまでベースで、決してセオリーではない」と話す。
「一例を言えば、見て楽しむものを『観賞』、芸術性のある場合が『鑑賞』で、映画ならば娯楽作品は観賞、芸術作品が鑑賞となります。しかし、今、娯楽映画と芸術映画の違いは明確ではなく、一方、どんな作品でも前売り券は『鑑賞券』。校正で使う『観』と『鑑』はある意味、実態とズレているとも言えます」
【せいさく】も、芸術や工芸品などは制作で、実用的な物の場合や量産品は製作という基準がある。
が、「映画の製作委員会はすでに固有名詞という判断ですし、テレビ局は各社異なり、番組は制作で、クレジットのときには製作とする局もある」とまあ、いろいろ。
「校閲としては、ハンドブックに縛られることなく、書き手がどう言葉をイメージして使っているかを大事にしつつ判断するのが大切」
― [似て非なるもの]の違いがわかる大事典【7】 ―
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