夏野剛×ひろゆき「iPhoneに日本製の部品は必要なくなる」
ソニーが今月25日に行った投資家向けの説明会で、スマホ部門に関して「20~30%の売り上げ減があっても利益を確保できる事業態にすることが急務」と、異例の“マイナス目標”を立てたことが話題になった。スマホ事業では、アップルやサムスンといった“巨人”に加え、新興の中国メーカーの台頭もあり、今や日本メーカーは「出る幕がない」という状況だ。
さらに、日本メーカーが苦境に陥るのはスマホ業界だけでない。今やさまざまな分野、さらに言えば総合家電メーカーだけではなく中小を含めたさまざまなメーカーが危機を迎え、「ものづくり大国・日本」の礎が揺らいでいる。そういった状況に対し、「来年には『日本の部品を使わなくても新しいiPhoneが作れる』という状況になるかもしれない」と話すのは、慶應義塾大学の特別招聘教授で、KADKAWA・DOWANGOなどで取締役を勤める、夏野剛氏だ。
夏野氏は、今月発売になった著書『実はほとんどのビジネスマンが知らない「当たり前」の戦略思考』のなかで、元2ちゃんねる管理人の西村博之(ひろゆき)氏と対談。前出の発言はそのなかでのコメントなのだが、著書のなかから一部を抜粋してご紹介したい。
西村:日本にとって最悪のシナリオは国際競争力を失っているうちに海外の国が伸びることですよね。そうなると、もともと日本の会社が持っていたマーケットが奪われてしまうこともあるわけで。
夏野:もう進んでいると思う。海外のホテルから日本メーカーのテレビが消えているし。日本のメーカーは、部品を作っているからなんとか持ちこたえているけど、日本クオリティの部品が海外で作れるようになったら、もうアウト。
西村:時間の問題ですよね。iPhone6の部品は半数が日本製と言われていますけど、現状だと、iPhone4レベルであれば日本製の部品を使わなくても作れてしまう。もちろん、iPhoneが進化し続ければ日本メーカーの存在価値は維持されますけど、iPhone6の進化が微妙なように、5年後には「別に日本の部品を使わなくても新しいiPhoneが作れるじゃん」ってなると思うんですよね。
夏野:5年もかからない。来年から始まると思うな。液晶画面やフラッシュメモリーは日本メーカーが先行しているけど、すぐに追いつかれると思うし、パナソニックのリチウム電池も時間の問題。
西村:ノートパソコンと同じ運命でしょうね。レノボに買収されたIBMのノートパソコンって、もとは日本でしか作っていなくて「日本の技術力は高いよね」って言われてましたけど、すでに海外でも作れるようになっている。それと同じことがスマホでも起きると。
夏野:確かに。日本のメーカーは、部品や技術を一つの製品にするパッケージ力が欠如していたからAppleになれなくて部品メーカーに成り下がっているけど、最後の砦である部品もそろそろヤバくなってきた。
西村:プロモーションもデザインの能力もないから、必然的に日本の存在価値はなくなりますよね。
夏野:日本にも優れたデザイナーはたくさんいるし、世界のトップレベルで活躍している“個人”の数は多い。だけど、日本は個人が集まって“組織”になった途端に競争力を失ってしまうからね。
西村:組織全体が一番下のレベルに合わせるからじゃないですか? 例えば、ダンスならグループのなかの一番下手な人に合わせないと全体が揃わないわけですよね。あえて下手なままにしているアイドルもいますけど、一般的にはグローバル目線であったりトップを伸ばす仕組みを作っていないので、いつまでも競争力はつかないと。
夏野:海外にはすごい能力を持った人はたくさんいるけど、もっとたくさんの下手な人もいるからね(笑)。
夏野氏は著書内で電機メーカーだけでなく通信キャリアやIT大手など、さまざまな企業のビジネススキームを分析している。不可能といわれた動画サイトの黒字化をニコニコ動画で達成した夏野氏なだけに、今、なぜこの会社が「儲かるのか/儲かっていないのか」を知るうえで、指針になりそうな一冊だ。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
『実はほとんどのビジネスマンが知らない「当たり前」の戦略思考』 “ニコニコを黒字化させた大学教授”の頭脳がはじき出す、これからの時代で「勝つ」ビジネスモデル―。 |
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ