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「結核の治療は薬を飲む以外に方法はない」副作用のオンパレードに怯える日々【結核闘病記vol.3】

―[結核闘病記]―
 現在も世界人口の3人に1人が感染、年約380万人が発病しているという“世界最大の感染症”、結核。日本でも年間約2万人が新規患者となり、約2000人が死亡している。治療法が確立し、かつてのような“不治の病”ではなくなったものの、決して過去の病気とは言えないのだ。そんな結核にSPA!編集部員・北村土龍も感染⇒発病。ある日突然大量に喀血して、「隔離病棟」へと入院したのだった――。これはその闘病の日々の記録である。 ◆抗結核薬の強力な副作用
抗結核薬

左からピラジナミド、ピリドキサール、リファンピシン、イソニアジド、エタンブトール。これで1日分

 結核と診断され、まずは以下4種類の抗結核薬を処方された。結核治療は、これらの薬を飲むことが中心となる。 ・イソニアジド ・リファンピシン ・エタンブトール ・ピラジナミド  それに加えて、「ピリドキサール」というビタミンB6補給のための錠剤も。イソニアジドの副作用としてビタミンB6欠乏症による末梢神経障害があり、それを防ぐためだという。
抗結核薬の説明書

抗結核薬の説明書には、恐ろしいほどの数の副作用が書かれていた

 4種類の抗結核薬の説明書を渡された。それを見ると、副作用が思い切りたくさん書いてあって不安になる。結核菌を殺すための強力な薬を飲むため、副作用も強力なのだ。嘔吐、蕁麻疹、手足のしびれ、めまい、発熱、筋肉痛、下痢……。「乳房の女性化」や「勃起困難」は嫌だなあ。「視野に暗いところができる」ってどういう症状なんだろう……。 ⇒【画像】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=770003  入院中は毎朝、看護師さんの目の前で薬を飲まなければならない。これは「DOTS(ドッツ)」(directly observed treatment short-course=直接服薬確認療法)といって、結核を完治するために必要なものだという。結核病棟の病棟医長、T医師はこう説明してくれた。 ◆薬を飲まなければ、もっと恐ろしいことに…… 「結核は6か月以上服薬すれば、必ず治すことのできる病気です。ところが、治療の途中で服薬を止めてしまったり中途半端に薬を飲んだりしていると、抗結核薬に耐性を持った結核菌『多剤耐性結核菌』が出現してしまうおそれが出てきます。こうなると、治療はさらに困難になってしまう。薬の飲み忘れを防ぎ、患者が医療従事者とともに自らの健康と生活を管理していく方法がDOTSなのです」  4種類の抗結核薬を飲む理由は、「結核菌の中にはある特定の薬が効かない菌がわずかにあり、一剤だけを使用していると、その薬が効かない菌が増殖してしまいます。そのため、作用の異なる薬を併用することで、すべての菌に対処していきます。この4種類は、現在の結核治療のスタンダードとなっている薬です」(T医師)とのこと。  主要な抗結核薬であるイソジアニドとリファンピシンの両方が効かない場合は、ほかの薬を試すことになる(「薬剤感受性検査」によると、幸い私は4種類とも効くことが後に判明した)。 ◆薬を飲み始めて、初日から副作用が  抗結核薬を飲み始めると、初日からめまいと吐き気がして、38℃前後の発熱におそわれた。吐き気がおさまると、耳鳴りがする。自分の声が頭蓋骨の内側で共鳴しているような感覚だ。視覚も距離感がつかめなくなって、パソコンでメールを書こうとしてもマウスのポインタがうまく合わない。フラフラして足もともおぼつかないので、いったん横になって休んだ。  しばらくして起きると、大量の汗が……。そして臭い! 汗の臭いがいつもと違うのがはっきりわかる。  大量の汗や発熱は結核の症状でもあるそうで、これらすべてが副作用というわけではないだろう(副作用の羅列におびえて過敏になっていたからかも?)。飲み始めて数日のうちはいろいろな症状が現れたが、しだいにおさまっていった。  それからしばらくは何の副作用もみられなかったが、服薬後3週間ほどたったところで突然じんましんがあらわれた。全身がかゆくなり、掻いたところから赤く腫れ上がっていく。夜になると症状がひどくなり、強烈なかゆみでなかなか眠れない。
副作用の羅列にたじろぐも「薬を飲む以外に方法はない!」 【結核闘病記vol.3】

毎朝、看護師さんの目の前で薬を飲み、服薬ノートにサインをしてもらう

 担当医のS医師は「抗結核薬の副作用です。人によりますが、飲んですぐ出る副作用もあるし、こうして2~3週間後に出てくるものもあるんです」と説明。「ザイザル」という飲み薬と、塗り薬の「レスタミンコーワクリーム」を処方してくれた。すると2~3日でじんましんは出なくなり、それから2週間ほど予防のためザイザルを飲み続けた。ザイザルの副作用は眠気など。ぐっすりと眠れて私にはちょうどよかった。 ◆肝機能と尿酸の各数値にも影響 「抗結核薬の副作用はいろいろと書いてありますが、一般的に多いのはじんましんなどの痒み、発熱など。副作用がまったく見られない人もいます。また、一時的に肝機能と尿酸の各数値が上がります。これはそれぞれの抗結核剤に強い肝毒性があり、ピラジナミドが尿酸の再吸収を促進するため。服薬が終了すれば自然に下がってくるので大丈夫です。  ただし、肝機能障害や痛風の症状が起きるくらいまで上がったら服薬はいったん中止することになります。結核を治すには、現時点では薬を飲んで少しずつ菌を殺していくしか方法がありません。なるべく服薬は中断したくないのですが、そこは患者さんの体調を見ながら、ということになります」(S医師)  結核菌は分裂して発育するが、その分裂速度は「条件の良い環境でも約15時間」と、非常に遅い。そのため治療の際にも時間がかかるという。どんな薬でも副作用はあるもの。「薬を飲めばかならず治る」。この言葉を信じて、今は薬を飲み続けるしかない。 <文/北村土龍>
―[結核闘病記]―
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