更新日:2022年09月25日 11:08

謎に包まれたスポーツ「近代五種」が東京オリンピックの穴場である理由

今から始める2020年東京五輪“観戦穴場競技”探訪 第50回~ ※前回の話…スポーツ好きブロガーのフモフモ編集長が、東京五輪でチケットが買えそうな穴場競技探訪へと出かけました。今回のターゲットは「近代五種」。五種類の競技の成績で勝敗を決まるくらいは知っているが、正確にその中身を知る人がほとんどいない“東京五輪穴場の大本命”が今回のターゲット。大会インフォメーションも皆無という閉ざされた世界を垣間見るために、四方手を尽くして開催情報をキャッチしたフモフモ編集長が謎に包まれた「近代五種」の実態をお伝えする!

近代五種最大の見せ場、コンバインドの厳しさ

 コンバインドが勝負を決める、その触れ込みに偽りはありませんでした。コンバインドでは1秒=1ポイントで差がつくような仕組みになっています。ランニングのほうはある程度実力差というものがあらかじめわかっているでしょうが、問題は射撃のほうです。的に5発当てるというのが、コレがなかなか難しい。構えて、撃って、また構えるまでに3秒ほどはかかるでしょうか。一発外すごとに、ここまでの競技で頑張って稼いだポイントが帳消しになっていきます。  そして「外してしまった」という気持ちは、さらに焦りを生んでいきます。1発外せば水泳での1秒差相当ぶんほどが帳消しになり、2発外せばフェンシングでの1勝分相当ほどが帳消しになる。そして、この射撃は5発当てるまで解放してもらえず、最大で50秒も足止めを喰らうというルール。それが合計4回もある。1発外すごとに客席からため息でも漏らされたら、精神的にもかなりキツイことになりそうです。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1370016

射撃が苦手な選手は50秒撃ちつづけても5発当てられず、係員から打ち止めを宣言される

JOCの「オリンピック有望選手」に認定されている女子中学生・浜屋玲奈さんは射撃が苦手なようで、4回とも50秒かけても当てられず「打ち止め」に

 射撃が得意な選手でも5発スンナリと当てるのは難しく、1発くらいは外しています。その1発のロスで追いかけてきたライバルに抜かれたりするので、見ていてもとても面白いものでした。「はずせー、はずせー」と祈りながら最後まで逆転劇を待つことができるのは、いい仕組みです。試合時間としても、5種全部観れば丸一日かかりますがコンバインドだけなら15分程度。  この大会では男女ともコンバインドで1位となった選手が総合でも1位となり、やはりこの種目の重さというものが見られました。五輪組の男子・三口選手はコンバインドが5位となり、総合では2位に留まりました。女子の山中選手はコンバインドで1位となり、そのまま総合でも1位に。なるほど、コンバインドを制する者が大会を制するという感じです。

終わったあとはグッタリ

 「いやー、よかった、やっと近代五種を見られた……」と、満足したのも束の間。実はこの大会には大きな難点がありました。何と、今さら言うのもアレですが、この大会は「近代四種」の大会だったのです…。それはコンバインドをまとめてカウントしているわけではなく、馬術競技がこの大会では外されており、総合成績も「水泳・フェンシング・コンバインド」で決めるという立てつけだったのです。  一応、この会場には馬場もあり、馬も飼われているのですが、馬術競技に挑むのは日本代表選手だけなのだそうです。時間もないし、不慣れな人が乗ったら危ないし、馬術はやめときましょうということなのでしょう。最後の決着をコンバインドで決めると言うわりには馬術より先にコンバインドをやってるのをヘンだなーと思ってはいたのですが、まさか近代五種の大会で1種やらないというパターンがあるとは思いもしませんでした。

総合成績にカウントされないオマケの馬術に熱い視線を送る熱心な観衆

日本を代表する一部の選手「だけ」が馬術に挑む

 何だか、この競技を志す選手たちの健気さに泣けてくるような気になりました。ひとりで5種目という大変さは単に運動としての過酷さだけでなく、「ひとりで5種目分の用具(水着、剣メタルジャケット、乗馬服、鞍、ピストルなど)を担いでまわる」というしんどさでもあり、「ひとりで5か所の練習場(プール、フェンシング道場、乗馬クラブ、射撃場、ランニングコース)をめぐる」という手間でもあり、いろいろな苦労を5倍背負っている。にも関わらず、基本的に世間は存在ごとスルーしているし、たまにやる大会でも実戦練習さえさせてもらえないなんて。  試合後、選手たちは大会運営で使うテントやら椅子やら机やらを自分たちで解体し、自分たちで片付けていました。マイナー競技では当たり前の光景とは言え、これでは強くならんわなぁとも思います。まず、十分な練習機会と実戦があってこそ、腕前も上がるというもの。そのスタートラインに立つこと自体が、この近代五種という競技では難しいようです。

片付けも選手たちの仕事

 こんな感じですので、「観戦」という趣の人ももちろん少なく、見たところ10人くらいでしょうか。その10人すら選手の親兄弟だったかもしれません。「見る」以前に「やる」がまだちゃんとしていないのですから、五輪本番でも安定の穴場となることは確実。いや、むしろ、五輪でこそ見やすくなる穴場と言えるのではないでしょうか。  五輪なら会場に入るときに警備にいちいち尋問されることもないでしょうし、パイプ椅子くらいは置いてあるでしょう。何より、ちゃんと「5種」を見られるはずです。ほかの競技だと「普段の試合よりハードルが高くなる」のが五輪観戦ですが、近代五種は「普段の試合が超絶ハードルが高い」ので、むしろ五輪のほうが行きやすい逆パターンとなるのではないでしょうか。  初めての近代五種観戦はオリンピックがオススメである。  せまーーーい穴場への潜入を経ての実感です。
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