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権力の座に長く留まり、腐敗した自民党。野党が取るべき姿勢は/倉山満

表向き対立しているような自民・立民は、実はグルなのだ

言論ストロングスタイル

12月6日、臨時国会の開会式を終えた立憲民主党・泉健太代表(右)と岸田文雄首相。泉代表は“いつもの野党”を脱し、国民に“マトモな野党”をもたらしてくれるだろうか―― 写真/産経新聞社

 政治に絶望するのは勝手だが、諦めて何もしないと何をされるかわからないのは、コロナ禍でほとんどの国民が懲りただろう。政治への監視を怠ったツケだ。  特に、日本人は長らく「マトモな野党」特に「マトモな野党第一党を持てない」宿痾に苦しめられてきた。海江田、岡田、蓮舫、そして極めつけの枝野。無能な歴代野党第一党党首が安倍晋三内閣の史上最長政権化に貢献したか計り知れない。  自民党への批判などいくらでも可能なのに、あえて頓珍漢な「追及」を繰り返す。これで、どれほど自民党政権は助けられたかわからない。本欄’21年3月9日号で指摘したが、自民党と立憲民主党には「森山-安住ライン」が存在し、安倍・菅政権では国会の意思決定は、このラインで行われてきた。自民・立民で国対委員長だった森山裕と安住淳の二人がそれぞれの党派の利益を背負って話し合い、妥協点を取り決める場だ。言ってしまえば、表向き対立しているような両党は、実はグルなのだ。

事実上の政界再編が行われ、自民党の守護神が消えた

 ところが、総選挙を経て、そのラインが崩壊した。今や日本の国会は別の国かと思うほど正常化している。「いつもの野党」による特定少数者向けの「追及」は鳴りを潜め、自民党の政策の誤りを数字に基づいて科学的に批判する。その結果、「18歳以下の若者に10万円を配る。ただし5万円分はクーポン券で」という謎の政策は転換を余儀なくされた。  今や、事実上の政界再編が行われているのだ。  安倍内閣の守護神と目された枝野幸男が去り、立憲民主党の代表が泉健太に代わった途端に、これだ。野党の真っ当な政策論争の前に、大臣たちが立ち往生している。

議会は政府吊し上げの場でも、支持者向けパフォーマンスの場でもない

 それでも自民党の方は油断しているようだ。クーポン券の方針転換にしても、「先に転換してしまえば野党の追及をかわせる」と思ったようだ。だが、既に実務を担う地方自治体からは「混乱させるな」と苦情が殺到だし、メディアは「迷走」と書き立て始めた。  本来、議会は穏やかに話し合う場であって、政府を吊し上げる場でも、支持者向けのパフォーマンスの場でもない。最初に「提言」型野党を提唱、実践したのは国民民主党であり、日本維新の会も岸田文雄政権になって与党との対決姿勢を明確にした。両党は連携を深める。これに泉体制になってからは立民も同調の姿勢だ。
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野党国対という「いつもの野党」のたまり場の崩壊
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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