デミオ・ディーゼルのライバルはアクアに非ず!狙いは世界の頂点なり
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
スバル・レヴォーグに乗った時“これぞ日本自動車産業の零戦”と思いましたが、それは早とちり。現代の日本の零戦はマツダの末っ子デミオ・ディーゼル! 国内専用車のレヴォーグに対して、こちらは独仏などの欧州勢が真のライバル。零戦どころか、言うなればスマホで新幹線でアポロ11号!! 試作車に乗って、そう感じた理由を述べさせていただきます
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清水草一=文 Text by Shimizu Souichi
池之平昌信=撮影 Photographs by Ikenohira Masanobu
◆欧州の雄・VWとの決戦が待っている!世界を震撼させるマツダの最新兵器
新型デミオの1500ccクリーンディーゼル試作車に試乗して、私は号泣した。これぞ日本自動車産業の零戦、世界を震撼せしめる最先端兵器だ!と。
日本のメディアは、この新型デミオ・ディーゼルをトヨタ・アクア(ハイブリッド)の対抗馬と位置付けているが、まったくもって着眼点が井の中の蛙。それは日本市場だけの話である。
確かにこのデミオ・ディーゼル、秋の発売時には、日本ではアクアと同じくらいの値付けがされるだろう。燃費はアクアより多少劣るが、軽油はガソリンよりリッター20円強安いので、燃料代はほぼ同じになる。ボディサイズもだいたい同じ。まさに好敵手だ。
しかしそれはあくまで国内の話。このクルマが目指したのは、そんな狭い世界での勝利ではない。世界の頂点なのだ!!
私自身アクアオーナーであるが、アクアは東京のような混雑した低速環境では最強だ。しかしロングドライブではパワーが足りず、日本に次ぐ第2のHV市場である北米でも売れ行きはいまひとつ。欧州では販売すらされていない。つまり国内専用兵器に近い。
対するデミオ・ディーゼルはパワーが違う。アクセルを踏めば、大排気量のアメ車のような怒濤の加速が開始される。なにしろ2500ccガソリン車並みのトルクなのだ! ノロノロ走るのはアクアのほうが若干得意だが、アクアがガラケーならデミオはスマホ。そういうことなのである。
このデミオが積む1500ccスカイアクティブDエンジンは、小排気量ディーゼルとして世界に先駆け、日本や欧州の最新排ガス規制をクリアした点に最大の価値がある。アポロ11号みたいなもんだ。しかも性能抜群で低コスト!! これが凄い。
私は昨年まで、フィアットの1300ccディーゼル車に乗っていた。そんなもん日本に正規輸入されていないので、当然並行輸入である。憧れの欧州小型ディーゼルだったが、乗ってみて驚いた。
遅いのである。アクセルに対する反応が鈍く、ディーゼルなのに低速トルクもない! ディーゼルの本場・欧州でも、小排気量ディーゼルは、排ガス規制の強化によって驚くほど遅くなっていた! しかもこれでユーロ4規制対応。来年9月から欧州で全販売車にユーロ6対応が義務付けられたら、小排気量ディーゼルは絶滅するんじゃないか? それくらい遅かった。あまりの遅さに半年で叩き売ったほどだ。
しかし、あのフィアットに乗っていたおかげで、私にはこの新型デミオ・ディーゼルの価値がよくわかる。だって走りが蒸気機関車と新幹線くらい違うから!
⇒【後編】『クルマの本場欧州を震撼させたマツダの底力――技術で規制もコストもクリア』に続く https://nikkan-spa.jp/689964
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