アニメ『聖闘士星矢 黄金魂』スタッフが語る「黄金聖闘士の魅力」
⇒【前回】はコチラ
――今回描いた、主人公・獅子座アイオリア以外の黄金聖闘士の魅力について教えてください。
●牡羊座ムウ
竹内:冷徹さの中に情熱を併せ持つのが、ムウの格好よさですね。彼は第2話で、自分自身をアルデバランのような肉体派キャラとは違うポジションであると自覚して事を進めますが、あれこれ策略を巡らせても行動自体は肉体派ですね。敵陣に一人で乗り込んで実験台になって、体を張って敵の核心に迫ろうとしますからね。肉体派と知性派を併せ持ったキャラクターですね。
●牡牛座アルデバラン
古田:強きをくじき、弱きを助ける。あと彼には愛があります。敵であろうと助けますから。いつものように必殺技のグレートホーンで敵をぶっとばすだけでは彼の愛情が伝わらないので、今回は違った形に描きました。
竹内:朴訥としていて、肉体派キャラであることを隠そうとしないとことが男らしい。余計なことは考えない点が清々しい。第7話で敵にビンタをかます演出には、僕も笑いましたが(笑)。
●双子座サガ
竹内:彼はまるでぶれない。誰が敵であるかを確実にわかっていて、躊躇しない。だから水瓶座が裏切ったときに、容赦なくぶっ飛ばした。生前にいろんなことを乗り越えて、自分は善人ではないと知っているからあそこまでできるんでしょう。今作では、自分を正当化しようとせずに悪者を倒そうという割り切った感じを描きました。
●蟹座 デスマスク
竹内:今作の陰の主人公ですかね。デスマスクは敵のボスであるアンドレアスに「お前は黄金聖闘士の中で一番弱い」と言われてしまうのですが、あれは戦闘能力のことではなく「人としてダメだ」という意味ですね。そんなダメな人間が恋をして、人が変わる。決して性根が直って改心したわけではなく、原作では極悪だった分、そういう人間味に溢れた面を出したかった。あと今回「積尸気冥窮波」という、敵を生かさず殺さずの状態にする新たな必殺技を披露しました。これまでは即死技のみだったのですが、そこにも彼の成長が表れているんじゃないでしょうか。もし「黄金魂」が1年シリーズだったら、そのうち1か月分くらいは蟹座に費やしていたかもしれません。
●乙女座 シャカ
竹内:男気というより、なんなのかな。相変わらず上から目線で、規格外に強い。そんなシャカも、慈悲深さを身につけたという点が最後に描かれています。
古田:神闘士バルドルとの対戦がすべてを物語っていますね。
●天秤座 童虎
竹内:童虎は原作でも意外と描かれていないことに気づき、作り込みました。どんなキャラなんだろうといろいろ考えた結果、蘇って一番ノリノリで新しい命を楽しんでいるのは童虎ではないかと。なんだかんだで熱い奴ですし、一番フルスイングで使いたいと思いましたね。
古田:聖闘士の中で最年長だけど、原作では若返った後に教皇シオンとちょこちょこ戦っていただけですからね。あとはサガに対してもリーダーシップがとれる。普段ならサガがボス格なのですが、童虎がいることで黄金聖闘士の中に新しい空気が生まれたんです。
●蠍座 ミロ
竹内:ミロはわかりやすいヒーロー。「黄金魂」では自分たちが置かれている状況がわからず、上司である女神もいない。でも自分の小宇宙(コスモ)が戦えと言っているから戦う。これ以上格好いい奴はいないでしょう。アイオリアではなく、彼が最初にリフィア(物語の鍵を握る少女)に出会っていたら、きっと相手にしなかったでしょう。戦に女子供はいらん、というタイプに思えます。
古田:まっすぐな奴。アイオリアと似た肉体派ですが、「俺について来い」という潔さがありますね。
●射手座 アイオロス
古田:多くは語らないけど、「信念で戦ってきた」と堂々と言わせられるキャラです。扱いが一番難しかったですね。出たら一人で全部倒してしまいそうなので。
竹内:アイオロスは『聖闘士星矢』の中で一番正しいキャラです。「未来に託す」ために戦うという彼の行動原理は星矢シリーズの原点でもあり、『黄金魂』の大きなテーマです。敵のボスであるアンドレアスと真っ先に対峙したときの「自分ができなくても、仲間がやる」という台詞も、それを示しています。ちなみに見た目は大人ですが、実はあれで14歳なんです(※原作での死亡時の年齢)。当初は少年アイオロスのアイデアも出しましたが、今回はこのようになりました。
●山羊座 シュラ
古田:彼は新たに受けた命を、生前にアイオリアの兄・アイオロスを粛清したことへの罪滅ぼしに使いました。そうした、義のために生きるところをちゃんと描きました。カミュ戦でも、「試合に負けて勝負に勝つ」という彼らしさが出ていたと思います。
竹内:彼は今回、一番贖罪をやっていたと思います。ちなみに彼はいつも、上役に恵まれないんですよね。
●水瓶座カミュ
竹内:蟹座とは違う角度から、人間らしさを描きました。彼の場合は、それが愛ではなく友情。友人スルトの妹を死なせてしまったことへの罪滅ぼしというよりも、新たに受けた命を使ってスルトの魂を救いたいという思いが中心です。時間があったらもっとドラマが作れたはずなんですけど。スルトのために敵側についたことを女神に咎められたとしても、カミュはきっと友情を貫くでしょうね。
●魚座 アフロディーテ
竹内:視聴者はご存知のとおり、彼にはクライマックスで大役を担ってもらいました。見せ場を作れて良かったですね。
古田:今回、彼はいろいろ考えて行動していました。蟹座デスマスクが惚れた女のコが捕まった際には、デスマスクより早く現場に到着していますしね。
竹内:彼はおちゃらけたナルシストに見せかけて、裏でちゃんとヒーローとして動いている。なのに肝心のデスマスクが一歩遅れたせいで、悲劇が起きてしまった(第4話)。
本当にダメ人間なんですよ蟹座は。あれくらいのことが起きないと、己のダメさ加減に気づけなかったということです。
――『黄金魂』製作過程を振り返りながら、同世代のファンや視聴者に伝えたい言葉はありますか?
古田:そういったことは、特に意識していなかったのですが……最近のアニメは主人公自身があまり戦わない作品が多いですが、星矢のような拳と拳がぶつかり合うアニメがもっとあっていいと思います。今作をきっかけに、今の子供たちにも星矢の良さが広がって欲しいですね。
竹内:僕たち“星矢世代”も今や社会に出て、会社の過酷な環境に身を投じている人もいるでしょう。星矢の世界も実は少し似ているんですよね。周りに制止されても戦い、信念の為に厳しい闘いに身を投じる。改めて原作を読んで、会社のためには死ねないけど、家族や仲間、世界を救うためなら命を賭けれるかなと思えました(笑)。不条理だけど、なぜか熱いんですよね。今年の12月からは本格的に『聖闘士星矢』生誕30周年を迎え、しばらく「星矢祭り」ですから、同世代のファンにもおおいに楽しんでほしい。子供の頃に見たフィギュアも、今はだいぶ進化していますしね。今作をきっかけに、「星矢熱」が盛り上がっていけば良いと思っています。
(『聖闘士星矢 黄金魂 Soul of Gold』は全世界5000万PV突破を記念し、通常無料配信の第1話に加え、第2話~第11話を9月19日0:00~9月25日23:59までの間、無料配信中。急げ! 詳しくはhttp://saintseiya-gold.com/index.htmlまで)
『聖闘士星矢 黄金魂 -soul of gold- 3』 原作・車田正美が魂を込め放つ、新たな“星矢伝説” |
ハッシュタグ