年末から怒涛のように忘年会、クリスマスパーティ、新年会など例年になく酒を飲んだ。巷の景気は少しは良くなったのだろうか、お誘いの回数が増えたのは大変光栄なことなのだが、齢40を過ぎた身にとって、連日連夜の飲み会は体にも財布にも堪える。
エナジードリンク否、滋養強壮ドリンクを極細ストローでチュウチュウすすりながら今夜の新年会の詳細を確認していると、夜遊びガイドのO氏から着信が。
「渋谷にいるんですか? 今、話題のあの店にはいきましたか?」
聞けば、疲れ気味のおじさんたちに大人気の「癒やしのスポット」として連日連夜、盛況なのだとか。
癒やしのスポット 入り口には行列が
飲み会前にと、馳せ参じたのは道玄坂。ぐいぐいと袖を引いてくる客引きをかいくぐりながら着いたのは、味のある老舗商業ビル。入り口前の路上に置いてあるA型看板に足を止めるご同輩。「すっぴんカフェバー」という文言が異彩を放っている……。古いエレベータがゴトンと音を立て止まる。煤けた壁の一角。カラフルに輝く、素通しのドアから店の中を覗き込むと、ご同輩がずらりと列をなしているではないか。
ドアを開けると目に飛び込んできたのはカウンターのなかで微笑む女のコたち。明るめの照明、背後に流れるはジャズ。耳をつんざくような声を発する、体育会系のボーイもいなければ、カラオケ、もちろんEDMもない。「こんばんは」。にっこりと微笑みながら向かいに座ってくれたのは明日香ちゃん(19歳)。ボーダーシャツにショートパンツ。くるぶし丈の白ソックスにスニーカー姿。しかも、下の看板に偽りなくすっぴん。実年齢よりも若く見える。
「ここはメイクやネイルは禁止なんですが、私は普段からメイクはしない派なんです。乾燥防止のためにリップはしていますが、本当にそれだけなんです」
きめ細やかな肌は思わず目を見張るほど。“すっぴん風メイク”も巷でははやっているそうだが、明日香ちゃんの場合は乳液とクリームでのお手入れのたまものとか。
「嘘だと思うなら触ってみてもいいですよ」と口を尖らせるほど。顔を近づけてご尊顔を拝見させていただいたが、まるで乳児のよう。周りを見回していても、化粧をしているコは皆無。新宿・六本木界隈の“夜の蝶”なら化粧やネイル、香水など“盛り”を褒めるのだが、なんの衒いもない“素”。こうなると神々しくさえ感じてくる。
「私たちがすっぴんなせいか、お客さんも飾らない、ナチュラル派の男性が多い気がします」
確かにご同輩を見れば、ほとんどが単独男性。色黒筋肉質やホスト系は皆無。グループも大声を出したりせず、穏やかに飲んでいる。
カウンターの奥ではせっせと料理をする女のコ。日替わりで女のコの手料理も食べられるという。
「私の作った料理も食べにきてくださいね!」エプロン姿でかいがいしく料理する様子を見ていると、女子校の文化祭に紛れ込んだよう。すっぴん女子たちは、おじさんを甘酸っぱい気持ちにさせる……。
【NATURALIA(ナチュラリア)】
住:東京都渋谷区道玄坂2-10-12新大宗ビル3号館6F
電:03-6277-5673
営:15~24時
休:なし
料:10分300円(15~17時)、10分400円(17~24時)飲み放題●日替わりの手作り料理は500円(ご飯つき)
協力/O氏(夜遊びガイド)撮影/渡辺秀之
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苫米地 某実話誌で裏風俗潜入記者として足掛け5年。新天地でヌキを封印。好きなタイプは人妻
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