【私の夜】ディープな街、鶯谷。ホテル街だけじゃない隠れた飲み屋の魅力に迫る

 名前の由来は赤ワインが好きだから。当連載の新メンバーとして加入した初の女性記者・メルローです。相当なザルらしく、「どれだけ飲んでも顔色が変わらない」と言われる私にぴったりなこの企画。

しっぽり飲んで大爆笑。この温度差もまた醍醐味

 酒好きとして気になる店は数あれど、なかなか女性ひとりでは入りづらい。今回は取材という名目を引っ提げて、“山手線で最もディープな街”と謳われる鶯谷に降り立つ。お目当ては、“幻の名店”と呼ばれるバー「よーかんちゃん」だが、まずはどこかでサクッと一杯引っ掛けたい。

俺の夜 ということで、1軒目は鶯谷駅北口の目と鼻の先にある「信濃路」を訪れた。目を惹くのは壁一面に貼られたメニューの短冊。枝豆やもつ煮といった定番の一品物はもちろん、蕎麦やカレーなどの食事メニューの豊富さに驚く。

ひとりだけど孤独を感じない独特の雰囲気

俺の夜

当店おすすめの昔懐かしいオムライス。味噌汁付きで食事利用にも

「実は自分も正確なメニュー数は把握してない(笑)。お客さんには好きな一品を選ぶところから楽しんでほしい」

 そう話すのは店長の松本秀昭さん。

「おひとりさまも多く、客同士も店員もあまり干渉しない。古い店構えだけど、店内のリニューアルは進めているので、女性客にも気軽に来てほしい」

俺の夜

芥川賞作家の故西村賢太氏の行きつけでもあり、レバニラ炒めとハムカツをよく頼んでいたという

 濃いめのハイボールに酔いしれ、ひとりだけど孤独を感じない独特の雰囲気を味わい、店を後にした。

【信濃路】
住:東京都台東区根岸1-7-4 元三島神社 1F
営:日曜・月曜5:00~24:00 火曜~金曜8:00~26:00
年中無休(営業時間変更の可能性あり)
電:03-3875-7456
料:ハムカツ450円、レバニラ炒め500円、オムライス700円、ドリンク250円~食事メニューには味噌汁付き

御年83歳の店主が商う光り輝く異世界

 ギラギラした看板や豪華な噴水を横目に歩くこと数分。ホテル街の先にあるのが、会員制バー「よーかんちゃん」だ。扉を開くと、某夢の国の電飾パレードをぶちまけたかのような眩しい世界が広がる。

俺の夜「取材今日だっけ? 忘れてたよ!」と言いながら出迎えてくれたのは、元芸人の店主、よーかんちゃん(83歳)。

「店内の雑貨は、すべて僕の趣味。光り物が好きなんだ」

 まずはおすすめだというグレープフルーツハイで乾杯。絶品の料理に舌鼓を打っていると、よーかんちゃんによるショーが始まる。

俺の夜

一度来た客の顔と名前は忘れないという。「この商売で大事なのは気配り目配り欲張りだよ」

「曲はすべてオリジナルで、カセットテープで流している。テープが切れたら二度と聴けなくなってしまうんだよ」

よーかんちゃんの若さの秘訣

俺の夜 年齢を感じさせない軽快なステップと声量。14歳から芸人を始めたというだけあり、ユーモア溢れるステージ。曲中には、客の名前や特徴、話した内容が盛り込まれ、店内は大盛り上がり。ショーが終わると若さの秘訣を語ってくれた。

俺の夜

ダイアナ妃の結婚記念ボトル(写真左)は40年前に購入したという

「暇をつくらず働き続けること。昔からいくら稼いでもすぐに使ってしまい、気づいたらお金がない。でもそれが長く働く原動力にもなっている」

俺の夜

スタッフは皆板前で高級料亭に負けず劣らずの料理

 取材の合間にも、食べな、飲みな、と優しく促してくれる姿に温かさを感じる。令和に似つかわしくない雰囲気が、どこか儚さを感じさせる鶯谷。どんな人でも受け入れる街の懐の広さを垣間見た。

俺の夜【よーかんちゃん】
住:東京都台東区根岸1-2-12 坂本ビル
営:月曜~土曜17:00~23:00
休:日曜
電:03-3875-1511
料:飲み放題10000円 料理付き15000円(サービス料込み)
会員制だが実は一見さんでも入店可能
事前連絡で料理のリクエストも可

撮影/鈴木大喜

メルロー 無類の酒好き女子。特にワインには目がない。自分よりも酒が強い男性に惹かれやすい
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