39歳から妊活に取り組んだ男「3年間で250万円の費用がかかりました」

101人の妊活男性の声も収録された「俺たち妊活部」

101人の妊活男性の声も収録された「俺たち妊活部」

 授かりたいのに、なかなかできない――不妊治療に悩む夫婦は、年々増加している。なかなか妊娠に至らず時間だけが過ぎていく残酷さや、不妊治療に伴うコストの重さがもたらすストレスは容赦がない。それゆえ、苛立ちが募り、1歩間違えば夫婦仲をも危うくさせる……誤った知識や態度で臨む妊活は、本末転倒なリスクも孕んでいるから厄介だ。

 そんな妊活に、真っ正面から挑んだ体験記がこのたび上梓された。SPA!でも活躍中のライター・村橋ゴロー氏の「俺たち妊活部」だ。39歳から愛妻・りえちゃんと二人三脚で始めた妊活体験を通じて、村橋氏が得たものとは――。

 * * *

――妊活を始めたのは39歳。決意に至ったきっかけから、お聞かせください。

ゴロー:そもそもを言うと、今から12年前の04年。まだ付き合って半年だった妻が「あなたの子どもを産みたいの」と。当時400万もの借金があった俺にですよ? 凄い肝っ玉だなって(笑)。ですから結婚して、すぐにでも子どもは欲しかったんです。でも何年経ってもできない。これは不妊カップルあるあるですが「互いの仕事が忙しく、年齢ギリになるまでクリニック敬遠しがち」というのがあって、僕もご多分に漏れず。四十路の声が聞こえる一歩手前に、会社帰りの妻を近所の小料理屋に誘い、こう言いました。

「りえちゃんさ、僕ら一番望んでたことがあったよね。でもふたり、忙しさにかまけて目をつぶり、ごまかしてきたよね。りえちゃんも来年40歳。もうギリギリだと思うんだ。後悔だけは絶対にしたくない。だから真剣に不妊治療を受けようと思うんだ」と。この言葉を待っていたのでしょう、妻は涙をボロボロとこぼしながら、笑顔で「ありがとう」と言ってくれたんです。

――村橋さんは、『赤ちゃんがほしい』で不妊治療に挑戦中の男性に取材をたくさんされていますね。取材成果は著書にも反映されていますが、やはり「わかっているつもり」と思っていても男性側の理解は足りないものですか?

ゴロー:妊娠のメカニズムなど専門的な知識ももちろん必要になりますが、それ以前に必要なことがあります。それは“不安の共有”です。いまパートナーが何に悩み、苦しんでいるのか。それを共有しケアしてあげることが最重要課題だと思います。なかには金を出せばOK、クリニックに通わせればOK、と考えている御仁も多いのが現実です。僕が思うのは、不妊治療とは夫婦の絆をより一層深めることもできる良薬である反面、逆に一瞬にして破壊させる劇薬にもなり得るということです。「金は出す。あとは知らね」といったスタンスですと、マジで“妊活離婚”にもなりかねないので、ご注意を。

――実際、村橋家ではどれくらいの期間と費用を妊活に費やしましたか?

ゴロー:結果的に3年近くの期間、250万円の費用がかかりました。僕は結果的に子を授かったのでいいのですが、いつ授かるかもわからない“妊活地獄”にはまり、いま現在も尊い時間とお金を延々とつぎ込んでいたかもしれない。そう思うとゾッとします。不妊治療は惨敗を重ねると「ここまで来たら終われない」というギャンブル気質が働いてしまうもの。止めどきが本当に難しいんです。ですから金額なり期間なりでいったんのピリオドをつくっておかないと、相当しんどい治療なんです。

――妊活を通して、妻・りえちゃんの色んな面を見てきたと思います。特に印象深い思い出は?

ゴロー:何度目かの流産とわかった、その晩のことでした。会社から帰ってきたはずの妻が、なかなかリビングに顔を出さない。おかしいと思い玄関まで出ると、靴をはき突っ立ったまま、肩を震わせて泣いていたのです。しかも「ごめんなさい、ごめんなさい……」と。こんな悲しい謝罪を聞き、僕は胸がはちきれそうになりました。そして「誰も悪いわけじゃない。りえちゃんが笑顔でいてくれるだけでいい」と、言葉を必死にしぼり出し、彼女に投げかけました。すると「そんなふうにやさしく言ってくれる人の子どもを授かれないなんて……」そう嗚咽したんです。愛しくて悔しくて僕も涙に溢れ、ただただ、抱きしめるしかありませんでしたね。

――最後に、妊活に挑戦中のご夫婦にアドバイスをお願いします。

ゴロー:妊活に挑戦中は……いいことなんて何もありませんよ(笑)。だって、「いいこと」「楽しいこと」は、子どもを授かったときなんですから。でもね、辛いことばっかりですが、それを笑顔に変えることはできます。心にラブ、口元にスマイル、これがあれば変えられるはずです。ウチの妻はキンキン怒る人じゃなかったので助かりましたが、なかには抱えたストレスを夫に向ける人も多くいます。そんなときは逃げるのではなく、抱きしめてあげてください。取材した人のなかには「デートに誘ったら、昨日まで怒っていた妻が急に乙女のようになった」という意見も多くありました。実際、僕も「マンションの下まで“ゴミ出しデート”に行こう」と言い、手をつないでゴミ出しに行ってましたから。女性は、そんなことでも喜んでくれるのです。

 とにかく、妻への愛情、そして少しだけのユーモアさえ忘れなければ、あした頑張れる勇気がわくはずです。おこがましく「頑張れ!」などとは言いません。男なら「でも、やるんだよ」(笑)。置かれた場所で咲いてください(笑)。 <取材・文/日刊SPA!編集部>

俺たち妊活部

借金まみれのどん底ライターが妻と挑んだ、涙と笑いの妊活記録。「妻には言えない妊活男性の本音」も多数取材。

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