アカデミー賞受賞『マネー・ショート』で相場を学ぶ【コラムニスト木村和久】

― 木村和久の「オヤ充のススメ」その110 ―

 2016年度のアカデミー賞は、盛り上がったのか、地味だったのかよくわからない状況でした。レオナルド・ディカプリオの主演男優賞が最大のニュースかもしれませんが、何度もノミネートされて、ようやくオスカーをゲット。貢献賞的な意味合いもあるんでしょうか。ほか一番オスカーを取った作品が「マッドマックス怒りのデス・ロード」(6部門受賞)ですからね。面白いと思いますが、シリーズ的な匂いがしますので、新鮮さに欠けます。そんなわけで、まとまりのないアカデミー賞ついでに、渋くていぶし銀の輝きを放つ作品を、紹介したいと思います。

アカデミー賞受賞『マネー・ショート』で相場を学ぶ【コラムニスト木村和久】 一応通好みの「脚色賞」を受賞した作品で、タイトルは「マネー・ショート 華麗なる大逆転」といいます。しっかりブラッド・ピットも出ているのに、余り知られていない。けどウォール街では、伝説的なお話です。

 タイトルの「マネー・ショート 華麗なる大逆転」は日本のタイトルです。原題は「ビッグ・ショート」といいます。いずれにせよ「ショート」という言葉が鍵となります。ショートは、株取引の世界では「空売り」のことを指します。最初に株を借りて売って、値段が下がったら買い戻す取引を、空売りというのですが、大暴落時に凄い威力を発揮します。1920年代の世界恐慌でも、空売りで儲けた輩がおりましたから。

 というわけで、この「マネー・ショート」は、2008年のリーマンショックの時に、低所得者向けの住宅ローンが暴落するのを、いち早く察知し、空売りを仕掛けた男達の、実話に基づいたお話です。映画は専門用語が飛び交い、理解できないところもありますが、それにも増して、「ダムの崩壊も一滴の水から」というような、ほころびが見えて来て、磐石に見えた住宅ローンが、砂上の楼閣のように崩れ去っていく様は圧巻です。

 アメリカの株取引の映画といえば「ウォール街」(1987年。オリバー・ストーン監督、マイケル・ダグラスはアカデミー主演男優賞)が傑作として名高いですが、この作品も脚色賞を受賞しただけあって、なかなか見ごたえがあります。

 ここからは現実の空売りの話です。我々株取引をやっている者たちから見れば、空売りで成功する人は上級者であり、普通の人は滅多にやりません。それはなぜかと言うと、あまりにもリスクが高いからです。つまり空売りは、青天井といわれて、負けたら際限がないのです。仮に100万円の株に空売りを仕掛けたとしましょう。最初に100万円で、見事株が売れた。じゃ値段が下がったら、買い戻せばいい。しかし期待と裏腹に、その銘柄はどんどん上がって行った。株価は上がったら、ストップ高を繰り返して、際限なく上がります。100万円が、1000万円になることも、理論的にはあります。だから空売りは怖いのです。これが安くなって買う通常のやり方で、100万円の株を買ったとしましょう。上がれば丸儲けだし、損をしても、100万円以上は損をしません。通常の売買は、ゼロになれば終りだからです。

 そういえば、アベノミクスが開始された、今から約3年弱前。日銀の金融緩和で、日経平均先物が、大噴火した時があります。その時、たまたま日経平均先物で、「買い」で持ってましたが噴火してすぐ売ってしまった。それでも、日経平均先物は急上昇をしている。でも幾らなんでも上がり過ぎだろうと思って、「空売り」仕掛けました。ところがである。私の予想をはるかに超えて、日経平均先物指数は上昇していく。指数が上がっているのに、負けがこんで行くのって、精神的に辛いですよ。結局、何十万円か損して許してもらいましたけどね。

 空売りはほかに、株を借りて先に売るので、その貸し株料もバカにならないし、空売りは人気がでると、「逆日歩」という、わけのわからない手数料みたいなものを、毎日徴収するし、しまいには「売り禁」という、空売り禁止まで出るから困ったものです。

木村和久

木村和久

 映画の話に戻ります。空売りを仕掛けた証券関係者達は、根拠も理論も正しいのに、何故住宅ローンの相場が暴落しないか、冷や汗垂らしながら見守ります。住宅ローンの相場は下がるどころか、逆に上がっている。空売りだから、相場が上がったら、損をするわけです。やはり住宅ローンが崩壊するというのは、机上の空論だったのか。そんな追いつめられていく状況で、ふと、何かが動いたのです。

 あとは映画館で確認しましょう。ちなみに「マネー・ショート」は、3月初旬公開で、現在上映中です。

■木村和久(きむらかずひさ)■
トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦

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