星野リゾート代表が明かす“星野流の経営哲学” 「総支配人でも役職で呼ぶのは禁止です」
北海道勇払郡のリゾートホテル・トマムの「雲海テラス」や、青森県・青森屋の「みちのく祭りや」など、独自の趣向を取り入れ、数々のリゾート施設の運営事業を成功させてきた星野リゾート代表・星野佳路氏。今回、昨年10月にオープンしたばかりで、特徴的な形をしたキャビン(客室)が印象的な日本初となるグランピングリゾート「星のや富士」にて取材・撮影を実施。「星野リゾートブランド」を確立させた経営方針に迫る。
――最近、星野リゾートの名前を耳にする機会がすごく増えていると思います。なぜ、こんなに注目されるようになったのでしょうか?
星野:基本的に私たちが行っていることは、現場で起こった“事件”を解決しているだけなのです。例えば、私たちが手掛けた北海道の大型スキー場トマムの「雲海テラス」は、ゴンドラの整備スタッフが「夏の間、山頂まで上がると、毎日、雲海の素晴らしい景色を見られる。夏でもゴンドラを動かして、この景色をお客さまに見せたい」と言い出したのが、きっかけでした。今実践している企画の多くは現場スタッフから声が上がり、“事件”が起き、それを解決していった結果のものばかりなのです。
――ただの現場の声として流されてしまいそうな意見が、星野リゾートでは“事件”になる、と。
星野:基本的にホテルで働く人間は「お客さまに喜んでほしい」という気持ちを持っているから、「もっとこうしたらいい」という声があるのです。ところが、「予算がない」とか「自分の権限では決められない」とか「それは私の担当じゃない」というような現場の障害がある。そこで肝心なのが「フラットな人間関係」です。お客さまに喜んでもらいたいと思う気持ちがあるのに、障害があって行動に移すことができない。その障害を取り払うのが私たちの仕事です。もちろん、人間関係をフラット化することにより、言いたいことをみんなが言い出すので、波風は立つし、“事件”も起きます。でも、この波風を弊害とは捉えずに良しとするのが星野リゾートの特徴だと思います。
――どんなにフラット化を目指したとしても、役職の違いや入社年度の違いなどで、どうしても社員間の差は生まれてしまいそうですが。
星野:現場で接客をするスタッフと総支配人だったら総支配人のほうが偉く見えますが、別に偉いわけじゃなく、単に「何かを決める権限」を持っているだけ。その決定や判断の前にディスカッションタイムをつくり、問題意識を持っている人が発言できる環境をつくればいいのです。
――役職などの上下はほとんど存在しないということですね。
星野:はい。星野リゾートでは、総支配人のこともマネジャーも「○○さん」と呼ぶようにしています。役職名をつけるのは禁止です。
――それは星野代表も、ですか?
星野:私のことを「星野さん」と呼ぶ人もいます。ただ、ほかにも星野姓の人がいるので、「代表」と呼ばれることが多いのです。今新しい呼び名を考えているのですが(笑)。
※このインタビューは2/16発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです
<取材・文/藤村はるな 横山 薫(本誌) 撮影/寺川真嗣>

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