お葬式で増える「家族葬」「一日葬」。参列者が減っても費用は安くならない!?
それは「家族葬」という言葉から、「費用が少なくて済む安い葬儀」という印象を消費者が持ってくれれば、「自分たちに仕事の依頼が舞い込む」というように葬儀屋さんが考えて、積極的に宣伝したからです。
しかし、葬儀屋さんにとって、その葬儀が家族葬かそうでないかというのは、実はどうでもよい問題なのです。お葬式の司会や案内状の文言に家族葬という表現が使われることはありません。
つまり、お葬式の席で公式に家族葬という言葉が使われる機会はないのです。強いて言えば、参列してほしくない人に対して体よく断るときの理由として「家族葬なので」という言い方をするくらいでしょうか。
実際に葬儀屋さんが実務上、気にするのは、参列者のために用意するお返し物と料理はどれくらい必要かということだけなのです。多すぎても少なすぎても都合が悪いですからね。そのため参列者の人数は気にしますが、葬儀をどのような名前で呼ぶか、ということは大した問題ではないのです。
なかには、家族葬にすれば葬儀費用が少なくて済むと考えている方もいるようですが、家族葬にするしないは遺族の出費にはほとんど無関係です。
仮に家族葬ということにしてお返し物と料理の数を減らしても、その分参列者が持参する香典も減ってしまうので、大して葬儀費用の節約にはつながりません。
ちなみに同じ誤解を与えている言葉で最近は「一日葬」なるものがあります。
これは本来、お通夜・お葬式と2日間行うべき手順をお通夜を省いて、1日にしてしまった葬儀のことです。これもお通夜の料理代が浮くだけで大して葬儀費用の節約にはつながりません。
遺族の方が家族葬で最も気を付けなければいけないことは、「家族葬」という名前に引っぱられて遠い親族や近所の人の参列を断ってしまうことです。
「家族葬」だから家族のみでやらなきゃ、と誤解してしまうのです。家族葬というのは葬儀屋さんが商売のために考えた言葉に過ぎません。
お葬式には呼びたい人を我慢せずに呼ぶようにしてください。
<文/考える葬儀屋さん>
【考える葬儀屋さん】
葬儀社に15年以上勤務し、業界内部を知り尽くしたその道のプロ。業務内容はお葬式の担当と葬儀・葬儀業界の分析。Twitterアカウントは@kangaerusougiya。「ライブドアブログ OF THE YEAR 2015」にも選ばれ、月間45万PVを突破した「考える葬儀屋さんのブログ」も日々更新中。
葬儀には誰を呼ぶべき!?
―[考える葬儀屋さん/赤城啓昭]―
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