「いじめ」についてSEALDsの奥田さんと対談して思ったこと【鴻上尚史】
― 週刊SPA!連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―
SEALDsの創立メンバーの奥田愛基さんと対談しました。SEALDsの解散を発表した次の日でした。
話した内容は、「政治」ではなく「いじめ」についてでした。
もともと、『クイック・ジャパン』という雑誌で、奥田さんと「水曜日のカンパネラ」のコムアイさんが、僕のいじめについて書いた文章を読んで人生を変えたという対談がありました。
僕のファンがツイッターで知らせてくれたのです。
いじめについて書いた文章というのは、2006年に「死なないで、逃げて逃げて」というタイトルで朝日新聞の依頼で書いたものです。
もう10年も前のものですが、いまだにネットでは何度も取り上げられています。
この原稿には、思い出があります。
依頼したのは、朝日新聞の記者で、高校のクラスメイトだった山上浩二郎という男でした。つかず離れずの距離を取りながら、芝居を何度も見に来てくれたり、「記者クラブ」について議論したりしていました。
もし、原稿の依頼が彼からじゃなかったら、断っていたかもしれません。だって、天下の朝日新聞が「いじめ」について特集をするというのは、いかにも、「大人が上からの目線で子供に語る」という匂いがするのです。
けれど、依頼が友人だとなかなか断れません。僕は半ば、困ったなあと思いながら引き受けました。
そして、「上からでなく」「他人事でなく」「説教でもなく」、いじめられている子供に何が言えるのだろうかと考えて、取材で行った鳩間島で出会った小学生達を思い出したのです。
その時のことはこの連載でも書きましたが、鳩間島は過疎に悩み、小学校・中学校を廃校にしないために、全国から「海浜留学」を受け入れようと島をあげて取り組み始めたのです。
そして、全国から、不登校やいじめに苦しめられている小学生・中学生が集まりました。
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