タフエスト・サナバビッチは“P音”にあらず――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第282回(1998年編)
ストーンコールドはいうまでもなくヒール・テイストのベビーフェースで、“モントリオール事件”以後のビンスは“悪のオーナー”というファンタジーとリアリティーの境界線のあいまいなキャラクターに変身した。団体オーナー&CEO(最高経営責任者)としての立場はまぎれもない事実だから、“悪のオーナー”なるキャラクターはどんなヒールのそれよりも説得力があった。
1945年8月生まれのビンスは1998年3月の時点で52歳。ビンス自身がいつごろからプロレスラーとしてのデビューをプランニングしていたかはさだかではないが、ストーンコールドによるビンスへのたびかさなる暴行は、いまになってみればミスター・マクマホンがリングに上がるための“予告編”になっていた。
ストーンコールドがスーツ姿のビンスのボディーにキックをたたき込み、返す刀でスタナーをお見舞いするシーンは当初はかなりショッキングなものだったが、回数をかさねていくうちにそれは観客が心待ちにする定番シーンに変容していった。
3.29“レッスルマニア14”を3週間後に控え、3.2“ロウ・イズ・ウォー”クリーブランド大会でショーン・マイケルズ派閥DXとプロボクシング元世界統一ヘビー級王者マイク・タイソンがまさかの電撃合体を果たした。
ストーンコールドはこの“仕組まれたスートーリー”の黒幕をビンスと断定し、翌日の3.3“ロウ”ウエストバージニア州ウィーリング大会(3月9日オンエア分)ではビンスに対するリング上での“証人尋問”という前代未聞の実力行使に出た。
「ずいぶんとタイソンの野郎にご執心じゃねえか。そんなにこのオレにベルトを取らせたくねえか」
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