更新日:2022年08月23日 11:32
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「佐村河内とはいつも喫茶店の喫煙ルームで打ち合わせしていた」西寺郷太×新垣隆 “ゴーストライター騒動”を語る【最終回】

西寺:佐村河内さんと仕事して、楽しかったことはありましたか? 「よし、いい曲できた!」って握手したり。 新垣:それは、たくさんありますよ。 西寺:友達だったんですか? 新垣:友達……ではないですね。彼は端々に嘘をつくので。そこは壁を作ってました。 西寺:なるほど。今回、お話できてとても有意義でした。特に、スキャンダル記事が一般的に与えていた「新垣さんは佐村河内さんの圧政下で搾取され続けてきた」というイメージではなく、実際は牧歌的でこじんまりとしたゆるい関係だったことが分かって。 新垣:間抜けな関係ですね(苦笑)。でも、懐かしい話ですね。いつも新宿駅南口の喫茶店の喫煙ルームで彼と打合せをしていたんです。けっこううるさい場所ですけど、自分は小声でぼそぼそと喋っていました。 西寺:ずっと最初から言おうか迷ってたんですが、新垣さんの話し声ぼそぼそと小さ過ぎて、新垣さんが何を喋ってるか、僕でもちょっとわからないときがあります(笑)。あー、それで佐村河内さんが「あ、耳が聴こえないことにしよう」って、ピンときちゃったのかもしれませんね(笑)。でも、なんだかんだありましたけど、新垣さんの曲が良かったから売れたという面もあるんだと思いますよ。 新垣:西寺さんのゴーストもやりましょうか? 西寺:いや、僕は自分で書けるので大丈夫です(笑)。 あ! 急にクラシックの交響曲とか書く時はぜひお願いします(笑)!  騒動を紐解いてみれば、「何がREALで、何かFAKEなのか?」という論争も、結局はその中間に真実はたゆたっていた。事実は小説より奇なり――すべてを分かったうえで観客を煙に巻いた『FAKE』、そして今、ゴーストライター騒動から3年の月日を経て語られた、スキャンダルとはかけ離れた二人の関係性。それは、私たちが日ごろから目にし、耳にするニュースはあくまで“都合よく切り取られ、解釈された現実”でしかないことを、改めて痛感させられる。 ●新垣隆(にいがきたかし) 作曲家・ピアニスト。桐朋学園大学音楽学部作曲専攻の非常勤講師時代に佐村河内氏と出会う。後にゴーストライター発覚以降は、自分の名義で精力的に作品を発表している。著書に騒動を受けた自伝『音楽という<真実>』(小学館)がある ●西寺郷太(にしでらごうた) ポップンソウル・バンド「ノーナ・リーヴス」のメイン・ソングライターであり音楽プロデューサー、MC、作家など幅広い分野で活躍。音楽レーベル「GOTOWN RECORDS」主宰。著書に『噂のメロディ・メイカー』(扶桑社刊)『プリンス論』(新潮社刊)など。ノーナ・リーブスの結成20周年記念ベスト盤「POP’N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES」は3月8日発売 <取材・文/宮下浩純 撮影/難波雄史(本誌)>
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噂のメロディ・メイカー

「ワム!のゴーストライターは日本人だった!?」岡山、倉敷、サンタモニカ、高松etc.総移動距離1万1125kmの果てにたどり着いた“衝撃の真実”とは―膨大な取材と資料をもとに綴った前人未到のノンフィクション風小説。80年代を巡る“洋楽ミステリー”の誕生!


POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES

ノーナ・リーヴス、20周年記念ベスト・アルバム、リリース決定!


音楽という<真実>

ベートーヴェンに憧れて作曲家になった青年は、ある日もうひとりの「ベートヴェン」に出会った。天才作曲家の18年にわたる「ゴースト生活」の真相。

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