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郊外貧困の最新事情「“ファスト風土”はもっと悲惨なことになっていた」【映画監督・富田克也】

 ロカルノ映画祭で若手審査員・最優秀作品賞を受賞した自主映画制作集団“空族”の最新作『バンコクナイツ』が2月25日から公開されている。

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ファスト風土はもっと悲惨なことになっていた!郊外貧困の最新事情

映画『バンコクナイツ』より

 “作りたい映画を勝手に作り、勝手に上映する”をモットーに、毎回長期間におよぶ独特の映画制作スタイルで配給宣伝も自ら行い、作品は全てソフト化しないという独自路線をひた走る“空族”。

映画『バンコクナイツ』より

 その作品は日本にとどまらず広くアジアを見据えており、構想に10年を費やした『バンコクナイツ』もそんな作品のひとつとなっている一方で、パチンコ店、消費者金融、ドンキなどに埋め尽くされたロードサイドの不良カップルを描いた『国道20号線』や、アジアNO.1の経済大国と呼ばれた日本の地方都市の現状を捉え国内外の賞を受賞した本格劇場デビュー作『サウダーヂ』など、“郊外日本”をテーマにした作品をこれまで世に送り出してきた。


 日刊SPA!取材班は、空族のキーパーソンである富田克也監督に山梨県甲府市にてインタビューを敢行。『バンコクナイツ』公開を控えていた富田監督の目に、2017年現在の郊外日本の姿はどう映るのか。

富田克也監督

――最新作『バンコクナイツ』では田我流のMVのほか、stillichimiyaプレゼンツの映像コンテンツを手がける、スタジオ石が撮影に加わっています。いま空族のメンバーというのは何人くらいいるんでしょうか?

富田監督(以下、富田):スタジオ石はstillichimiyaなので空族じゃないんですが、空族の名刺を持っている人は10人くらいです。一本一本の作品で新しい人が関わってくれて、結果としてその人たちが空族になっていく感じです。

郊外は今、どうなっているのか


――’07年公開の『国道20号線』で地方都市と郊外に住む人たちの状況を描き、ある意味“ファスト風土”や“マイルドヤンキー”を先取りして描いていたようにも思います。しかしゼロ年代後半は花盛りだった「郊外論」も現在、映像も含めて全然流通していません。地方は今どうなっているのか、知りたいというファンは多いと思います。

富田:『サウダーヂ』以降、地方都市の状況は更に深刻化していると思いますね。空族は甲府の「へちま」(http://hechima400.blogspot.jp/)というミニシアターで全作品の定期上映をやっていて、俺たちも時間があるときはフラッと行ってみるんです。そこでいろんな観客と話す機会があるんですが、特に若い世代と話してみると、彼らの置かれている状況は、俺たちの世代とは比べものにならないくらい追い詰められていることがわかります。

ついにこの国でも“貧困”という言葉が真実味を持ち始めているのだと痛感しています。しかし、そう括るのは簡単ですが、なぜそんな状況に追い詰められているのかということが問題でしょうね。到底ここでは語りきれませんが、これは今急にはじまったことではなく、前世代からのツケ、いや、もう毒といってもいいようなものが下の世代を苦しめているのだと、はっきり認識するに至りました。


――状況は『国道20号線』が公開された2007年頃よりもっとひどくなっていると…。

富田:今が『サウダーヂ』を経てさらにその後ということを考えても、『国道20号線』の頃なんかまだよかったですね。今テレビのニュースでも貧困がよく叫ばれますけど、周りを見ても報道と一致している実感があります。もし、現在の甲府という主題にいま取り組むとしたら、貧困という言葉が日本でここまで真実味を持って響いている状況を描かざる得なくなるでしょうね。それくらい当たり前の状況になっています。

映画『国道20号線より』

――先ほどまさに国道20号線を通ってここ(甲府)まで来ましたが、消費者金融の看板など当時の記号的な企業はなくなっているように思いました。

富田:そうですね。消費者金融のATMなんかは表向きパッと見なくなった。けど、よくよく考えれば単に大手企業に吸収されていっただけなんですよね。つまり、それをメガバンクがやっているっていうだけで。

――なるほど。当時はメガバンクもここまで消費者金融とガッチリ組んでなかったわけですね。

富田:要はシステムに組み込まれて巨大化し真っ当なふりをしているんです。サラ金もメガバンクとか大企業がやりますよ、という正当化が進んだだけ。手数料もバンバン上がってるし、金利なんかないくせに、この前カードでの支払いが引き落とせませんという知らせが来て10日間くらい放置していたら、2万円近い利息払わされましたから。これってまさに消費者金融じゃん…と。

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甲府に移住してきた被災者から見えたもの

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■作品情報
『バンコクナイツ』 http://www.bangkok-nites.asia/
(c)Bangkok Nites Partners 2016  2017年2月25日(土)テアトル新宿、横浜シネマ・ジャック&ベティにてロードショー開始。全国順次公開

■取材協力
「春夏秋冬」山梨県甲府市大里町3261コシイシテンポ3棟(『バンコクナイツ』にて富岡役を演じた空族俳優・村田進二氏が店長)




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