亡命中国人漫画家が語る「日本が“美しく”見える理由」
日本人読者の皆さんは生まれた時から「正常な国」で暮らしてきている。
「正常な国」とはなにか。
新鮮な空気が呼吸でき、安全な水と食べ物を手にすることができ、首相を風刺するマンガを書いても身の安全を気にしなくてもいい。皆さんにとってはこれら当たり前のことが私の祖国にはないのだ。
私と妻は日本で暮らしてもう3年近くになる。いつも散歩にでかけると、青い空と白い雲にうっとりする。そして道端の小川を泳ぐ鯉や水面を飛ぶ鳥、皆さんには当たり前の光景だろうが、私にはとてもすばらしいものに見える。中国の都市では青空も白い雲も得がたいものとなってしまった。空はスモッグに覆われ、川はドロドロに汚染されている。汚染こそが日常なのだ。
日本で役所に行くと、公務員は本当に親切に応対してくれる。旅行中、道を尋ねても丁寧に教えてくれたり、積極的に手助けしてくれたりする人が多い。日本人にとっては当たり前の行動に思われるのだろうが、中国で見知らぬ人が親切にしてきたら、まず詐欺を警戒する。詐欺を働く人が多すぎて皆が疑心暗鬼となっている。日本とは根本的に世界が違うのだ。
日本にもさまざまな社会問題があることは承知している。ただ中国のニュースを見ると、毎週のように深刻な事故が起き、人権派弁護士が弾圧され、環境汚染によって母乳にまで毒素が含まれるようになり……と心底ぞっとする話ばかりが伝えられている。日本とは比べものにならない、ひどい話ばかりだ。
こんなニュースばかりを見ている私が日本のような平和な国に暮らして、不満を抱くようなことがあるだろうか。
2015年7月、私は安倍政権に抗議する国会前デモに参加した。日本の左翼は中国の脅威を忘れてないかと風刺するプラカードを掲げ、激昂したデモ参加者に詰め寄られる場面もあったが、警察は私の言論の自由を守ってくれた。
2017年2月、新宿で在日中国人によるアパホテル抗議デモを見学した。日本の保守団体が集まり横断幕を奪おうと突撃を繰り返したが、警察は中国人の言論の自由をしっかりと守っていた。中国人の言論の自由まで守る警察、そのすばらしい姿は目に焼き付いている。
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