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「ここは恋愛もSEXも禁止」――46歳のバツイチおじさんはヨガの総本山で煩悩とさらに戦い続けた〈第39話〉

それから数日間、さらにヨガと瞑想に打ち込み続けるも、煩悩はまるで消えなかった。 二つの恋心に加え、頭の中からおっぱいが離れない。 久々に見たおっぱい。 ジョアナのおっぱい。 頭の中はおっぱいがいっぱい。 アシュラムでヨガに専念しているはずなのに、俺の中の煩悩は最高潮に激しく渦巻いていた。 それからヨガに打ち込むも、心の乱れが太陽礼拝の10個のポーズにも影響を与え始めた。 右足で立ち、左足を右膝に引っ掛けて立つという、ヨガの基本ポーズでさえバランスを壊し、何度もこけるようになったのだ。

シヴァナンダ・ヨガの基本の10のポーズ。太陽礼拝

「集中、集中」 意識では集中していても、頭にはおっぱいがすぐ出てくる。 入門した当初はできていたこのポーズができなくなってしまった。 「いくら恋する旅人だとはいえ、何か間違っているよな」 ヨガ・アシュラムに入って、ヨガが下手になっては元も子もない。 ここはヨガ・アシュラム。煩悩を消して心身を整える場所。 ヨガ・アシュラムの規約に『ここは恋愛もセックスも禁止です』と書かれていた意味がやっとわかった。 恋をすれば心身が乱れる――。 そもそも、るりちゃんを追いかけてアシュラムにきたという動機自体が不純すぎたのかもしれない。 俺の入門初日、るりちゃんに冷たい態度をされたのも、そういう邪念が彼女に伝わっていたからなのかもしれない。 るりちゃんもサラも、そういう煩悩を消してここに入門しているはず。 どちらを選ぶにせよ、俺は頭に浮かぶおっぱいを、いや煩悩を消さねばならなかった。 「どうやったらこの煩悩が消えるんだ?」 どうしたら? うーーん。 そうだ! 最適な方法があるじゃないか。 瞑想だ。 メディテーションだ。 瞑想で心を整えながら煩悩と戦ってみよう。 だが、おっぱいを頭からを消すために今まで以上に瞑想に集中しなければならなかった。 どうすればいいのか? 誰もその解決方法を教えてはくれない。 自分自身でやり方を見つけなけなければならなかった。 それから数日が経った。 その日はサイレントウォーキングの日で朝日までの2時間、湖の前で瞑想をするプログラムだった。初日に初めて瞑想をした場所と同じだ。 俺は水際に陣取り、静かに目を閉じた。

瞑想の世界にどっぷりはまっていく46歳のバツイチおじさん

自分自身を深く見つめ直すためにはどうしたらいいか? 瞑想を始めて10分くらいたった時、初日と同様に深い沼に片足を突っ込んでいる感覚になった。 そして、ふと旅の始まりを思い出した。 ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※ 離婚直後、俺は「自分自身を漢字一文字で表すと何?」とカメラ片手に身の回りの友達に聞いて回った。 友達の一人は『時』と答え、仕事仲間の一人は『渦』と答えた。 『時』間感覚のズレや仕事仲間を『渦』に巻き込む俺の仕事ぶりから来た漢字だ。 しかし、最も多かった漢字は『剛』という漢字だった。 剛刀を作る刀鍛冶のように、何度も何度も作っては壊す作業をする思考回路が俺の一部にあるようだ。 また、頑固で頭が硬いということや、強引な俺の性格にも由来していると気づかされた。 しかし、聞いて回ったのは東京に住む仲間ばかり。 それはあくまでも東京での俺であり、社会に属した後の俺だった。 今度は社会的動物になる前の自分自身を知りたくなった。 もっと野性的で、本能のままに生きていた頃の自分。 そこに俺の本質があるはずだと思った。 ありのままの俺を知るためにはどうすればいいのか? そうだ、大分県の高校時代のバスケのプレースタイル! 体が小さくギリギリの体力で練習をしていた時は何も考えず本能でプレーをしていた。 そこなら俺の本質のもっと深いとこが見えるはず。 それから日本全国に散る10人のバスケ部のチームメイトの元を訪ね、自分のプレースタイルを漢字一文字で表してもらった。 しかし、その一文字は東京の仲間と同じく『剛』という漢字だった。 体が強く、強引にカットインして強引にシュートをねじ込むスタイルはまさに『剛』という漢字が適当なんだそうだ。ボールを渡したら帰ってこない自己中なプレースタイルも『剛』と感じさせたらしい。 どうやら俺の本質は『剛』の周りにあるようだ。 では、どうすれば『剛』な自分を超えられるのか? どうすれば俺は変われるのか? それを知るため、高校時代のバスケ部の監督に25年ぶりにお会いした。 「俺はどうしたらもっと良いプレイヤーになっていたのか?」 監督に尋ねた。 俺「俺、どげなプレーしちょけばよかったんですか?」 監督「隆一郎は背が小せいのに、無理やりスピードで中に切れ込んでシュートを決めようとしよったやろ?」 高2の春、膝の靭帯を切った俺は、それを取り戻すためスピードに固執していた。 監督「お前は、怪我する前は外から放れる良いシューターやったんやけん、もっともっと外から放れるようになっちょけば良かったやけどの~」 なるほど。『剛』なプレースタイルだけではなく、もっとしなやかに外から攻めればよかったんだ。 その時、ふとある言葉が頭に浮かんだ。 『柔よく剛を制す』 柔道の真髄である有名な言葉だ。 そうか! 今の俺に必要なのは『柔』なんだ。 『柔』を手に入れば、『剛』よりも強くなるはず。 だが、俺に染み付いた『剛』をそう簡単に変えることはできない。 どうすれば……? そうだ! これだ! 「体を柔らかくすれば、少しは変わるんじゃないか?」 よくわからないが、とにかく『剛』だった頃の俺と決別するためには『柔』を取り入れるしかないと強く感じだ。ここはヨガ・アシュラム。体を柔らかくするために、こんな最適な場所はない。 ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※ そんなことを考えていたら2時間の瞑想はとっくに終わっていた。

瞑想で何かを悟った後の朝日

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それからは、空いてる時間に柔軟運動を始めた
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1969年大分県生まれ。明治大学卒業後、IVSテレビ制作(株)のADとして日本テレビ「天才たけしの元気が出るテレビ!」の制作に参加。続いて「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ)の立ち上げメンバーとなり、その後フリーのディレクターとして「ザ!世界仰天ニュース」(日本テレビ)「トリビアの泉」(フジテレビ)をチーフディレクターとして制作。2008年に映像制作会社「株式会社イマジネーション」を創設し、「マツケンサンバⅡ」のブレーン、「学べる!ニュースショー!」(テレビ朝日)「政治家と話そう」(Google)など数々の作品を手掛ける。離婚をきっかけにディレクターを休業し、世界一周に挑戦。その様子を「日刊SPA!」にて連載し人気を博した。現在は、映像制作だけでなく、YouTuber、ラジオ出演など、出演者としても多岐に渡り活動中。Youtubuチャンネル「Enjoy on the Earth 〜地球の遊び方〜」運営中
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