家族や子供のために女装をやめられるか?――女装小説家・仙田学の決断
就職してしっかり働かないと、将来結婚できないよな。
もうすぐ子どもも生まれるし、お金貯めないと。
結婚して、子どもが生まれ、と新しい家族が増えるにつれて、手放さなければならないものも増えてくる。
趣味に費やしていた時間やお金も、そのひとつだろう。
女装という、ただでさえマイナーな趣味ならなおのこと?
第9回 女装小説家 仙田学の「女のコより僕のほうが可愛いもんっ!!」
今回は、女装を趣味としている男性はいずれ家族のために女装をやめなければならないのかどうかについて、考えてみたい。
私は、家族のために女装はあきらめるべきではないと考えている。
というのも、家族とはいえ他人だから。
家族のせいでやめてしまった、とは思いたくない。どうせやめるのなら、責任は自分で取りたいのだ。
「あの日ほんとは女装バーに行きたかった……」などと死ぬ間際につぶやきたくはない。
また、家族のために女装をやめることは家族の自由を奪うことにもなりかねない。
37歳で長女を授かったとき、私は市役所で開催された「こうのとり学級」に参加した。これから親になる人たちが輪になって、心構えを学んだり、不安に思うことを話しあったりする場だ。
「しつけって何?」という話題になったときのこと。順番がまわってきても、何も頭に浮かんでこなかった私は、とっさにこんなことを言った。
「絶対にしてはいけないことを、きちんと教えることだと思います。ただ、それって、人を殺してはいけない、ってことくらいしかなくて。人を殺してほしくないし、自殺もしてほしくない。あとは、自由に好きなことをして生きていってれれば」
隣で、妻は泣いていた。なぜ泣いていたのかはいまもわからない。
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