家族や子供のために女装をやめられるか?――女装小説家・仙田学の決断
私は私の信じるところのものを貫くことで、まわりの人々、特に家族を不幸にしてきたのかもしれない。
死ぬ瞬間に後悔したくないという一心で貫いてきたライフスタイルだ。
だが大切な家族を不幸にするのなら、それもまた後悔の種になってしまう。
そんな悩みをある方に話したところ、こんな言葉をいただいた。
「太宰治にしろゴッホにしろ、すぐれた芸術家はまわりの10人を不幸にするけれど、その代わりに100万人を幸せにする作品を残しています」
ゴッホの「ひまわり」と私の女装グラビアとのあいだには隔たりがありまくるが、その幸福と不幸の構造だけでも踏襲したい。
願はくは、その100万人のなかに家族やまわりの10人も含まれていますように。
娘がJKになったら、制服姿のまま学校帰りに待ちあわせて、一緒にディズニーランドに遊びにいきたい。
私は女装姿で。
ささやかながら、いまのところ私のおもいつく最大の社会変革だ。
しかも合法的な。
【仙田学】
京都府生まれ。都内在住。2002年、「早稲田文学新人賞」を受賞して作家デビュー。著書に『盗まれた遺書』(河出書房新社)、『ツルツルちゃん』(NMG文庫、オークラ出版)、出演映画に『鬼畜大宴会』(1997年)がある
<文/仙田学>
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